第204回 築30年マンションに15年住むとどうなる?

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

今日の記事は、日ごろ筆者が提供する「将来価格の予測レポート」の作成過程で気づく「まさかの事実」についてお伝えするものです。結論を先に言ってしまうと、「古い物件は値下がりしにくいものが多い」のです。

 

最近急激に高くなったマンション価格ですが、新築の上昇に伴って中古も上がったというのは紛れもない現実です。

新築も高い、それなら安いはずの中古に向かう。ところが、その中古も意外な高さに驚いたという声を頻繁に耳にしてきました。

中には新築より高い中古もあります。仲介手数料を払い、リフォーム代も払うと中古はむしろ新築より高くつく。そう勘違いしたくもなります。しかし、実際は立地も建物も全く別物なので、高い中古は比較対象の新築より間違いなく良い中古のはずです。

 

それはさておき、「高くなった新築に手が出ない。中古も相当古いものでないと予算オーバー。だけど、あまり古いものは不安」と語る人たちに伝えたい記事。そう思っていただいてもよいかもしれません。

 

●古すぎると感じる年数はどのくらい?

古過ぎるのは不安と語る人は、イメージ的に何年以上を古いと感じてしまうのでしょうか?調査データはないので、筆者に届くお便りから推察すると、築20年を超えたら古過ぎると感じている人が多いようです。

寿命から見れば、まだまだ住むことはできるのかもしれないが、古くなると何かと問題が起こって来るのではないか?このような不安が漠然と頭をもたげるようです。

 

実際に古いマンションを見学したかと問うと、見ていないと言います。つまり、初めから敬遠しているのです。「新しいものは安心、中古でもいいができたら築浅がいい」という購買者心理が壁になっているのでしょう。

 

●古い物件を検討するとき

築年数で20年以上を仮に「築古(ちくふる)物件とし、その見学時の注意事項をまとめておきます。

1.例外もありますが、築年数の古い物件は、検討する時間が比較的たっぷり取ることができるようです。築浅物件は相対的に足が早いので、まごまごしているとなくなってしまいます。その点、古い物件は敬遠されるものが多いからです。

 

2.古い物件は見栄えが悪く、新築のモデルルームを見たときの高揚感を味わうことはない。買いたいという気分が湧いて来ない場合も少なくない。しかし、最初から期待をしないので、ある意味で冷静に値踏みすることが可能です。

 

3.しかも、築年数が古いほど価格は安く、リフォーム費用を計算に入れても予算に余裕を持てる場合が少なくないのです。

 

4.外観や共用部分の古臭さを我慢し、購入住戸の中をどのように手直しすれば快適なマイホームになるかを想像しながら見学するのがお勧めです。

 

5.ただし、大掛かりなリフォームが必要なものは避けて、限定的なリフォームで心地よさが味わえるものを選ぶようにしましょう。

 

6.仲介業者に必ず尋ねるべきことは、修繕積立金の残高です。総額ではなく、1戸平均の額です。物件のタイプによって異なるので幅はありますが、少なくとも1戸平均100万円以上の残高があるかどうかを確認しましょう。多いほど潤沢ということになり、改修工事が実現しやすいのです。

 

7.過去の改修履歴も確認しましょう。どんな工事をどのくらいの頻度で実施したか、その工事にどのくらいの費用をかけたか、一定期間(例えば5年)に1住戸あたりいくら払ったのか、12年~17年に一度の大規模修繕と区分して聞くことができればベターですね。

 

8.室内をフルリフォーム(リノベーション)した物件は、新築同様、見学した瞬間に舞い上がってしまうほど感動的な物も多いですが、持ち主は不動産業者なので、価格が割高な場合が多いと思いましょう。

 

●長くて何年そこに住むかを計画してみよう

古くて安い中古マンションの一番の不安は、買ってからあと何年住めるのだろうかです。築30年のものを購入して20年住めば、そのマンションは築50年になります。築20年の物件なら40年マンションになることを意味します。

築40年~50年になると、マンションってどうなってしまうのでしょうか。現在、築40年、50年に達したマンションを積極的に探す人は少なく、購入したマンションが築40年・50年になった時、どのような姿になっているかを想像するのは難しいかもしれません。

 

40年・50年マンションの考えられる姿としては、40年以上も経ったマンションにはとても見えない綺麗な外観・共用部、植栽が見事に生長して美しいマンション、見映えの悪さなどはあるが、そこを我慢すればその後も快適に暮らして行けそうなマンション、かなりボロで快適に過ごせる状態ではない。建て替えるに建て替えられず、半分廃墟状態のマンション。以上の3種でしょうか。

 

②は、①ほどではないが管理状態が良く、必要最小限の大規模修繕も周期的に実施して来たので、故障も不具合も少なく何とか住んでいられる状態を指しています。

③は、修繕積立金が足りなく、臨時徴収や銀行借り入れなどの調達も管理組合の合意が得られず、結局は適時適切な修繕ができないために自然劣化に任せる状態となり、逃げ出す居住者も増えて空室の多い、廃墟寸前の状態をイメージしたものです。

 

①②なら結構ですが、選択する物件は20年先はともかく、いずれは③のようになるかもしれないと割り切ることも必要です。なぜなら、①・②のような期待が持てる物件は、かなり程度の良い中古物件で、購入時の20~30年時点で、管理状態の良さが感じられる物件だからです。価格も築20年・30年時点で近隣物件より2割も高い取引が成立していたりします。

 

筆者の今日の提案は、思い切って、賃貸マンションに住むよりメリットがあるという計算の元に、あまり程度が良いとは言えない中古を購入することです。つまり、高過ぎる価格の現況に抵抗ある人に対し、発想を換えてみましょう。そう言いたいのです。不人気の築古マンション、あえて20年以上の築古物件を検討してみることのススメです。

 

とにかく安いマンションを購入して、10年以上住めば元がとれる位の感覚で、「賃貸に住み続けるよりは得した」と思えるような買い物をすることです。

そのマンションを、もし借りたら家賃がいくらになるか調べましょう。そして、その家賃並み返済のローンを組むのです。

 

ちなみに、今日のSUUMOで検索してみると、新宿まで15分圏内の某駅から徒歩7分。築34年・新耐震の64㎡2LDKという売り物件が4980万円で出ていました。これを頭金ゼロ、30年返済の住宅ローン4980万円で購入するとします。

住宅ローン金利を1.0%とすると、毎月返済が約16万円で、管理費と修繕積立金が合計で3万円とあるので、固定資産税の月割り額を1万5千円として、毎月のランニングコストは20万5千円となります。

 

この地域の賃料を調べると、20万円前後と分かりました。この物件を仮に賃借するとしたら、上記返済額とほぼ同じと見られます。

 

このような物件に何年か住んだのちに売却したとき、たとえ500万円にしかならなくても、何も残らない賃貸マンションより得になるわけです。賃貸マンションでは家主に貢献するだけです。

 

では、この物件を仮に15年後に売却するとしたら、どうなるのでしょうか?30年ローンなので、15年後は半分弱減って、残債は2600万円余になっています。

15年後には築49年になりますが、手数料支払い後の3600万円で買い手が付けば、ローンを清算した手残りは1000万円となります。4600万円で売れたら2000万円にもなります。

物件によっては2600万円でしか売れない場合もあるでしょう。その場合は、手元に残るキャッシュはありません。それでも、金銭では測れないメリットがマイホームにはあるはずなので、賃貸マンション暮らしを続けるより良いと言えるはずです。

 

筆者の仕事は、キャッシュが少しでも多く残る物件かどうかの判定をすることにあるので、もし「この物件はどうか」と問われれば、少なくとも15年後、20年後の売却時のキャッシュが2000万円以上になると予測できる場合にGOを出す(おススメする)ことになるのです。

 

ちなみに、この事例の物件と同じの最寄り駅のエリアでは、今日現在販売中の新築物件は1件だけあって、駅から徒歩8分、60㎡で7500万円もします。築34年なので、4980万円の中古は高くないかと思った人もありましょうが、2500万円も安く購入することができるとも言えます。リフォーム代や諸経費の差などを計算に入れても予算は大幅に少なくなります。

 

●築20年が平均取引年数の今だが、20年先は築40年が標準になる

築30年もするマンションが、15年後にいくらで売れるものか、全く見当がつかないとおっしゃる人が多いことと思います。新築を7500万円で買った場合の15年後と、築30年以上の中古を5000万円で買った場合の15年では、どんな差ができるのでしょうか?これを同じ人が同時に買って試すことはできません。

 

また、7500万円の予算を持つ人が、同じ広さの中古を予算5000万円以下に落として探すということも現実的ではありません。

 

この記事のテーマは、予算5000万円の若い人が「郊外には行きたくない。そうかといって50㎡は狭いからいやだ、駅から遠いのもいやだ」というときの選択肢に「築古マンション」が残ったという場合、築古マンションってどうなのかにお答えすることです。

 

その話の前にお伝えしておきたいことがあります。

現在の中古市場で売りに出されている物件は平均すると20年ですが、これからの中古取引、たとえば20年先は築40年が当たり前になるのです。

そうなると、古いマンションは売れない・売りにくいなどということはなくなります。様々な施策が登場することもあるでしょうし、市場には「築古取引」が常態化し、安心感が広がって来るからです。

 

●20年を超えて来ると値下がり率が低くなる不思議

さて、中古物件の中には、全く値下がりしない物件もあります。しかも、築30年を超えている物件と築20年の物件とで売買価格に差がないという実例も、同じ地域内で比較しても多数あることが分かります。

中古マンションが地域の新築価格に対して、どのくらいのレベルかという指標(これを新築対比と呼ぶ)で見たとき、東京23区という広い地域の集計では築20年以上の場合、50%、つまり新築マンションの半分の位置になっています。しかし、31年以上になると、新築対比は45%程度と殆ど差がないのです。

20年を超えて来るあたりから減価率(値下がり率)が緩やかになることが分かっています。理由は簡単です。築古マンションの多くが売り出しの何年か前に、もしくは売り出しに当たってリフォーム工事をしてバリューアップするからです。

 

また、築20年も30年も「築古」というくくり方では、大差ないからだと分析する人もありますが、共用部の維持管理と室内の状態で値段は上下するということなのです。いかに綺麗に使うかによって、価格の維持率は違ってくるというわけです。共用部の改修状況、見た目の良し悪しなどが左右するのです。

機械的に、築20年だからいくらで、こちらは30年だから何%ダウンといった価格決定方式はないのです。

同じ地域で、中古物件を「築20年グループ」と「築30年グループ」とに分けて価格調査をすると、その差が5%程度しかないというケースに過去何度もお目にかかって来ました。

 

つまり、平均的には築30年のマンションを適正価格で買った場合、10年経っても、場合によって15年経っても5%程度しか下がらないのです。市況の良いときに遭遇すれば、買い値、もしくは買値を上回る値段で売買が可能になるのです。

 

ただし、適正な価格で買った場合と前置きしたように、高値つかみをしないことが前提です。今の時期は売り手が強気に走り、相場の上昇に便乗して高値で売ろうとするケースも多いので気を付けなければなりません。

※詳しくはこちらをお読みください。https://www.sumu-log.com/archives/11417/

高値で買ってしまうと5%ダウンどころか10%も15%も下がるのです

 

●「高く売れる」と「儲かる」は、別の話

自分としては良い物件を見つけたと喜ぶ人に多数お会いしますが、なるほど優良なマンションだと称賛できる物件である場合も少なくありません。これなら、10年後か15年後かに高い値が付くであろうと判定できる物件です。

もともと優良な物件なのです。地域では高く評価されるだろうことは素人目にも分かるのです。しかし、値上がりするかどうか・儲かるかどうかは、買い値との比較なので、全く別の話です。

 

新築マンションでも同じですが、優良なマンションは人気もあって高い倍率で抽選になったりしますし、世間が優良と感じるのですから優良なのです。中古も優良な物件はすぐに買い手が決まったり、高値でも買いたい人がすぐ現れたりします。しかし、その売り値は購入価格からの差異で見ると僅かであったりします。

高値つかみをしてしまえば、どんな優良な物件でも儲けが思惑通りに出るわけではないのです。

 

●維持管理が適切に行われるかどうかがカギ

適正価格で買った場合なら「築古マンションは値下がりしない」などと誤解されてはいけないのでお断わりしておきますが、5%しか下がらないと言ったのは、あくまで統計的なことであって、不動産価格は個別要因が大きく左右するものです。全てのマンションに当てはまるわけではないのです。

同じ地域の同年数のマンションであっても価格差はあるのです。一律に5%しか下がらないわけではありません。格差は大きく、売り値の単価をはじくと最安値と最高値では2倍ほどの差があります。

 

その差が何によってもたらされるかと言えば、地域性、駅距離、環境、階数、日当たり、眺望、物件規模(スケール感)、管理状態、室内コンディションなど多数の項目が影響しますが、地域性や駅距離、日当たりなど以外の共通点は「見た目の美しさ」にあると言えます。

見た目の美しさは、例えば室内が汚いなら価格も自然に下がることになるので、綺麗に使えばいいですし、新築マンションのモデルルームのような飾りつけ(インテリアコーディネート)をすれば解決できる問題です。

つまり、オーナー個人の努力と工夫で高く売ることができる部分です。これに対して、共用部を美しくするというのは、個人の力ではいかんともしがたい問題です。築古マンションを購入するとき、一番気にしなければならないのはここです。

 

既に30年の履歴があるわけですし、「今後も貯めた金がどれだけあるか」から未来の姿をある程度は想像できます。前の方で述べた「③かなりボロで快適に過ごせる状態ではない。建て替えるに建て替えられず、半分廃墟状態、のマンション」にはならないと期待できる物件を選ぶこと、そこがカギかもしれません。

 

 

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築30年の中古なんて、とても考えられないと感じた読者も多いことでしょう。 新築のモデルルームばかり見学して来た人なら、特に大きな抵抗があるものと思います。

 

今は発想の転換が必要なときです。発想の転換は、ときに大きな成功をもたらすものです。高いけど、場所も最高だし、将来も値崩れはしないだろうと考えて高値の有名マンションを選ぶのもいいですが、全く逆の発想で予算を大幅に余らせて築古(ちくふる)マンションを選択するのも一考です。マンションは古さに関係ない場所の価値、言い換えると経年減価しない「立地条件」の比重は大きいのです。

したがって、立地条件だけは妥協しない方がいいでしょうし、経年減価しない要素(共用部の内容やスケール感など)に着目して選ぶのがコツになりそうです。

 

予算が少ない若い世帯にも申し上げたい。「古くても大丈夫。築30年大いに結構。立地条件優先で探してみましょう」と。

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

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ちなみに、4月10日の第677回は「経年劣化しないマンション」です。

 

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