ル・サンク小石川後楽園建築確認取り消し裁判の結果から見る問題点

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建築審査会の様子(京都市のサイトより)

先日ル・サンク小石川後楽園の建築確認取り消しに対してデベロッパー(NIPPO、神鋼不動産)が起こした訴訟の判決が出ました。
訴訟に至るまでの経緯は弊ブログをご覧ください。
ル・サンク小石川後楽園建築確認取り消し事件について(1)
ル・サンク小石川後楽園建築確認取り消し事件について(2)
ル・サンク小石川後楽園建築確認取り消し事件について(3)
ル・サンク小石川後楽園建築確認取り消し事件について(4)
ル・サンク小石川後楽園建築確認取り消し事件について(5)終

文京・マンション 建築確認白紙の裁決「判断に誤りなし」(毎日新聞5月24日)

東京地裁 建築主2社の請求を棄却

東京都文京区に建設中だったマンションを巡り、完成直前に建築確認を白紙に戻した都の裁決を不服として、建築主2社が裁決を取り消すよう求めた訴訟の判決が24日、東京地裁であった。清水知恵子裁判長は「裁決の判断に誤りはない」として請求を棄却した。

判決などによると、マンションは文京区小石川2の「ル・サンク小石川後楽園」(107戸)。NIPPO(東京都)と神鋼不動産(神戸市)が2012年に建築確認を受け、13年に着工。地上8階・地下2階の建物がほぼ完成した。

一方、建設に反対する地元住民らが着工前に都建築審査会に審査を請求。同審査会は15年、1階駐車場が災害時などに直接屋外に出られる「避難階」に該当せず、避難階段もないと判断。都条例の安全基準を満たさないとして建築確認を取り消していたため、2社が提訴した。

判決は、駐車場が屋外への出入り口と約19メートル離れ、高低差が約2.5メートルある点を重視し「直接屋外に通じる避難階とは認められない」と判断。2社側が主張する避難階段が駐車場とは別の棟にあることから「駐車場から円滑に移動できない恐れがある」と指摘し、条例の求めを満たしていないと結論づけた。





何が問題だったかをおさらいすると、駐車場を避難ルートとして建築確認を下したものの、近隣住民が高低差や位置からその主張は成り立たないと(他にも論点はあった)建築審査会に訴えて、建築審査会が工事を差し止め、建築確認の取り消しを行った、そういう事件でした。

本来であればその避難経路の部分を直せば済む話なのですが、工事期間中に文京区の絶対高さ条例による高さ規制が入ってしまっているため、避難経路に手を入れるだけではダメで、数階分減築しないといけないためにデベロッパー側も引くに引けず都(建築審査会)に対して訴訟をしたが、あえなく退けられた、これが今回までのあらすじです。

さて僕が思っているのは、指定確認検査機関による建築確認制度のことです。
今回は都市居住センター(ユーイック)に建築確認が出され、下りているわけですが、それを東京都(建築審査会)が取り消した構図です。
まず状況を確認すると1都3県の建築確認はほとんどが特定行政庁(建築主事をおいている自治体、その首長。今回の場合で言えば文京区。宅建受ける人は覚えよう)ではなく、指定確認検査機関に出されています。なぜなら下りてくるまでの日数が段違いだからです。(そもそも指定確認検査確認制度自体の導入理由も自治体がパンクしたことによるものだった)

指定確認検査機関に建築確認を出すとわかるのですが、指定確認検査機関はかなり特定行政庁の意向を忖度するところがあり、リジェクトされる可能性のある案件は指定確認検査機関のところでダメ出しするケースも多いです。(逆に特定行政庁の見解を得ることができればそれには従うというスタンスです)
さらに建築確認を下す際も特定行政庁の建築指導課等で回覧されるので、今回のようなケースはにわかには信じがたいところがあります。
文京区は問題ないというスタンスだった(事実文京区への訴えは退けられている)が、都(建築審査会)は住民感情を忖度してか何らかの理由で取り消しに至った。そのように見えます。

しかしながら、指定確認検査機関が出した建築確認とはいえ、簡単に取り消せる、あるいは住民が騒げばそれを忖度して判断するのであれば、デベロッパーは安心して事業ができません。指定確認検査機関制度の根幹を揺るがす今回の事件にちゃんとした決着がつくことを願ってやみません。

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ル・サンク小石川後楽園(5)

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マンションコミュニティの皆々様方、ごきげんよう。不動産業界に身を置くDJあかいと申します。 この度、スムログという多くの人の目に触れる晴れの舞台をいただきましたので、普段のブログと一味違った学びのある記事を発信していきたいと思います。

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1 個のコメント

  • 匿名 より:

    “文京区は問題ないというスタンスだった(事実文京区への訴えは退けられている)が、都(建築審査会)は住民感情を忖度してか何らかの理由で取り消しに至った。そのように見えます。”

    事実と異なることが述べられています。この事件は、東京都建築審査会が避難施設が建築基準法令に違反しているとして指定確認検査機関(株式会社都市居住評価センター)の下した建築確認を取り消した事例で、東京地方裁判所も東京都建築審査会の判断を支持しています。株式会社都市居住評価センターの審査の姿勢が問題とされるべき事例です。
    また、ル・サンク小石川後楽園の建築基準法令の適否に文京区が係わることもありません(建築基準法施行令149条)。

    ブログの著者の独自の見解であるとしても、誤った情報を発信させることはマンションコミュニティにも責任があるはずですから御対応をお願い致します。

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