第74回 高値買いするとどれだけ損する?

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マンション購入を検討している人が今ぶつかる壁は、大きく分けると次の二つでしょう。

1)価格が高過ぎて予算に合う物件ががない

2)そもそも物件数が少ない

 

そんな中、面積を妥協したり、場所を変えたりして購入を決断して行く人も多数あるわけです。しかし、大半の買い手が高値買いを強いられているのも事実です。

 

今回の価格上昇過程をおさらいしましょう。

 

東京23区全体で底値だったのは、2012年でした。坪単価@264万円ですが、そこから毎年上がり続け、2016年には@332万円となりました。上昇率は4年で25%です。2017年も頭打ち気味とは言えますが、上昇トレンドが反転した訳ではありません。14月の前年同月比はプラスが続いているのです。

 

断定はできませんが、2017年も高水準となるでしょう。つまり、今は高原状態にあるのです。今後どこかで下落方向に転換するはずです。しかし、急カーブで下落することはなさそうです。ゆっくりと、数年かけて値下がりして行くことでしょう。

 

さて、高原状態で買ってしまうと将来の自宅価格はどうなるのでしょうか?数字を使って説明します。

 

2012年を100としたとき、2016年は125に当たるわけですが、今年125で新築マンションを買った人が10年後の2027年ころに売却しようとしたとき、我が家はいくらで売れるでしょうか? 2027年の新築マンションの相場が現在より10ポイント下がって115とします。

 

10年の中古マンションは平時には新築価格の8掛け程度なので、10年後の新築価格115×0.892となります。購入価格の125から9226%(92÷12574%)の値下がりになるのです。

 

時計の針を戻して解説します。

 

昨年、自宅を売却した人の例です。新築価格125に対し、9掛けの112が売却額でした。この人は4年前の2012年に100で新築を購入した人なので、築4年と新築に近いことから9掛けだったわけですが、12%も高く売ることができたというわけです。

 

5000万円で買っていたマンションが僅か4年で5600万円になったということになります。

 

別の例です。2007年に購入した人でした。2016年に築9年の物件を新築相場1258掛け100で売却できましたが、2007年は高いときで、2012年の100より高い106で購入していたのです。このため、106から100へ6%の値下がりとなりました

 

10年で6%しか下がらなかったとも言えます)

 

以上の数字から何が言えるでしょうか?

 

・前回の上昇過程であった2007年の新築価格は106だったが2012年は100で、そこが値下がりの最低ラインだった。

 

・同じように考えて、今は125だが、10年後の新築相場は今より下がっても120か最低でも115くらいに違いない。2012年の100まで戻る(下がる)ことはないはずだ。

 

・しかし、それでも新築相場が125から10年後に115になれば、築10年マンションは8掛けの92、92÷125=74、すなわち26%の値下がりになってしまうのです

 

・底値の2012年に買った人は2016年の高い時期に売ったので短期の売却益12%がもたらされた

 

2007年の高い時期に買った人は、相場の高い2016年ですら6%の売却損を被ることとなった。つまり、高いときに買った人は、相場が急騰しても買い値とトントンか値下がりになる可能性が高いのです。

 

10年住んで値下がりが6%だったら悪くないが、これからの10年は26%も下がるのか? 相場の変動次第で、こんなに差ができるのか?こんな感想をお持ちになった人も多いことと思います。

 

総じて、高いときに買ってしまうと売却のときに損をする確率は高いのですが、上記の説明は市場の平均値を使って解説したに過ぎません。実際は物件ごとに大きな格差があったのです

 

10年後に新築が今の相場125から115になったとき、その8掛けの9210年中古の価格であり購入額から26%の値下がりになる。もし、購入時に130の高値で買っていたら、92の売却価格では30%の値下がり(92÷13070%)になってしまいます。と言っても、それはあくまで平均的な理論値に過ぎません。

  

反対に、130を「高値」と感じながらも買った新築マンションが、10年後に92ではなく新築並みの115で売れるという場合がないことはないのです。それでも130115では12%(115÷13088%)の値下がりです。

 

やはり、高値買いすると売却時の相場如何とはいえ、損失の確率は高そうです。

 

新築相場の8掛けが築10年マンションの相場という前提で実例と試算をいくつか紹介した訳ですが、8掛けの根拠は何でしょうか?

 根拠は、実績データの蓄積です。この実績は10年経った中古と新築との差が80100くらいでないと中古に割安感がないという、買い手の心理・価値観から来たわけで、自然にそこへ収斂した結果と言えます。

 

同様に、築20年では新築の50%くらいになっています。30年以上なら40%などと価格差は広がって行きます。勿論、地域による差がデータに出ています。

 

10年中古を、その時点の新築相場の8掛け(80)程度で買った場合、10年後の20年中古は新築相場の50になるので、新築相場が10年後も同じとしたら、80から50へ、38%(50÷8062%)も下がるのです。

 

●物件固有の価値で格差ができる

しかし、マンション・不動産という商品は世界に二つとないものです。従って、物件固有の価値の差が価格に反映されて行きます。立地条件、建物の規模(高さと戸数)、品質・グレード、デザイン性、ブランドといったものが価格に影響するのです。

 

相場が低いときに買って、相場が高い今のような時期に売ればみんな儲かるかもしれないのですが、100で買って120になるか、110で買って140になるか、90で買って得した気分だったが売り出してみたら90でも売れなかったというような格差は物件固有の条件の差によるのです。

 

同じエリアの同じような条件の物件と見えても、何かが影響して差ができるのです。それは、階数(眺望)の差であり、建物全体の差であり、様々です。

 

購入するとき、その物件の固有の価値をどう見るか、また10年後の価値をどう予測するか、これは簡単ではありません

 とりわけ立地条件についての価値判断は困難な場合が多いものです。将来の変化が読めないからです。将来性はどうか、再開発によって将来価値は上がると言うが本当か?こうした検証もしなければなりません。人口減少・高齢化が進むとどうなるのかも同様です。

 

建物の劣化も進みます。維持管理がどのように行われて行くのかをしっかり見定めなければなりません。中古物件では、それまで維持管理がどのように行われて来たかによって先の価値判断が違ったものとなります。

 

新築のうちは、どれも綺麗で気持ちよく、我が家を誇らしくも思います。しかし、見る人が見れば10年後、20年後にどのような姿に変貌するのかが分かると言います。実は見た目も大事です。現在の日本人で「機能」だけでいい、色やデザインなど構わないという人はいないのです。洋服でも靴でもネクタイでも同じですが、見た目を気にして購入するものです。

 

家で言えば、雨露が凌げればよかった時代はとうの昔、今は力に応じた差ができるものの、それでも自分なりに性能が高く、かつデザインの良い家やブランドを選ぼうとします。

 

雨漏りさえしなければ木造の古いアパートでもいいとする人もないわけではないですが、同じ木造アパートでもお洒落な外観、お洒落なインテリアの新築に住みたい人が多いはずです。購入マンションにも同じようなテイストを求める人が多いのです。

 古ぼけた汚い中古より、管理が行届き、外観や玄関のデザインが豪華、上品、綺麗、お洒落、そんなものを漠然と望む人は多いので、専有部分がフルリフォームによって新築並みになっていても満足してもらえないのが現代です。

 

そう考えると、やはり物件格差は付いてしまうのも道理です。

 立地条件にしても、駅から5分以内は同じでも、かたや幹線道路沿い、もう一方は一歩中に入った閑静な住宅街で差ができるでしょう。また、駅10分でも、目の前が大きな庭園が広がるとか東京タワーが大きくくっきりと見える位置にあるが、他方は20m先に高層マンションがあって見通しがよくない物件では、やはり価格差はできるはずです。

 

●今はやっぱり買わない方がいいのか?

話題を戻しましょう。

 価格の高い時期であり、かつ新築に限れば品数も少ない今、当分は様子を見るべきなのでしょうか?その答えは、本ブログの70で述べましたので、そちらをご覧いただくとして、いま買うという決心をしている人にお伝えしたいのは、もう一度整理すると、次の2点です。

 1)売却のタイミング次第では損をする確率が高いと思うべきです

2)こういう時期だけに損を最小にとどめる物件選びが肝腎です

 特に力を入れたいのは後者ですが、新築・中古を問わず、このマンションを選んで本当に大丈夫なのか?地域内での競争力はどの程度のマンションだろうか?損はどのくらいか?このような観点で対象マンションを慎重にチェックしましょう。

 

新築ではモデルルームの演出に目を奪われないこと、中古では見ただけでは分からない維持管理のチェックを怠らないことなどが重要です。

 

これらの作業は長く快適に住むためであり、いざ売ろうというときに期待以上の価格で売れることにつながる重要なものです。

 

・・・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございます。

 

★差し上げています

未公開資料NO.51「新築を上回る価格の中古」となる条件と背景

未公開資料NO.68「買い手が落としがちの重要な質問集」

無公開資料NO.76「中古マンションの管理状態はこうしてチェックする」

 

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