第73回 人口減少時代の郊外マンション

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前回の記事が尻切れトンボのようになってしまったので、続きを書きます。

 前回の末尾で、「できるだけ将来価値が維持される条件を加味して物件選択をするようお勧めしたい。その条件①は、都心にあること、または都心にアクセスが良いことです条件②は、駅近であることです5分以内が理想です。この二つの条件が備わっている物件を選べば、時代が変わっても需要があり、その価値は維持されるはずです」と述べました。

 

ここの都心とは東京のことですが、東京から離れた都市に職場がある人はどうすればいいのでしょうか? そんな疑問が提起されるような気もします。何より、首都圏でない地方都市に居住する人はどうしたらいいのでしょうか?

今日はその点について補足しておこうと思います。

 

●マンションの価格は最終的には需給バランスで決まる

新築マンションでも中古マンションでも、相場は上がったり下がったりします。何かの原因で上昇し、別の原因で下落するわけですが、そこには需要との相関関係が必ず存在します。

 

ただでも要らない品物、高くても買いたい品物、言い換えれば需要がない品物、凄い需要がある品物があるように、新築マンションを例に取って説明すると、100㎡で2000万円の新築マンションを作っても通勤できない山の中ではただでも買う人はいないでしょう。何故なら固定資産税と毎月の管理費等がかかるからです。

 

バブル期にリゾートマンションが大量に販売されましたが、2000万円で販売された新築も今では500万円でも買い手がつかない物件が少なくないのです。週末にスキーを楽しむためのホテル代わりに買った人もあったのですが、その需要を当て込んで投資目的で買った人もありました。

 しかし、日本人で週末別荘を買うという人は限られているのです。需要がなければ、価格は下がる一方です。

 

 

姫路市と仙台市の共通点を見つけられる人は少ないでしょうか?地震に関係がある都市です。

1995年の阪神大震災のとき、家を失った人たちが被災の中心地の神戸市から遠くないエリアで家探しをしたとき、たまたま売れ残っていた姫路市(神戸市の西側、西区や須磨区・長田区辺りからでも結構な距離があるのですが、その姫路市)の山の中のような不便な場所に売れ残っていた某マンションが、あっという間に売れたという事実がありました。

 

阪神大震災では、神戸市や西宮市などの阪神間の一戸建て住宅が大量に倒壊し、住むことができない状態になったのです。とりあえず雨露を凌がなければならないと、仮設住宅や周辺都市の賃貸マンション、分譲マンションなどに多くの市民が移住しました。不便で売れ残っていたマンションでしたが、贅沢は言っておれないという被災者の心境だったに違いありません。

 

神戸市の西隣に明石市があり、そのさきに姫路市があります。東は大阪市です。

 震災後、マンション業者は多忙を極めました。被災地の神戸市や西宮市、尼崎市、大阪市などのマンションは、建築中も含めて飛ぶように売れたのです。

しかし、それも2年もすると一巡して元の市場に戻って行きました。しかし、価格だけは中々元に戻らず、その後は販売促進に苦労したのです。

 

仙台市も2011年の東日本大震災の被災地です。仙台でも同じようなことが起きました。価格も急激に上昇しましたが、それでも買いたいとする人が大量に発生したのです。不謹慎ながら、不動産業者は笑いが止まらなかったと聞きました。

仙台市のマンション市場も、少し調べてみると、6年を経過したため被災者需要は殆どなくなってしまったようですが、価格は高止まり状にあります。売れ残りマンションも少なくないのが実態です。

 

 

話を元に戻しましょう。姫路市の郊外にあった某マンションは、市内に通勤するには自家用車を使えば通えないわけでもない。何しろ地価はべらぼうに安いからマンション価格も安くできる。このくらいなら売れる。そう踏んだのでしょう。しかし、売り出してみると、さっぱり売れない。建物は完成し、僅かながらも入居者が生活を始めていた。販売促進策をいろいろ試したが埒(らち)が開かず、10か月を経過した頃、19951月、阪神淡路大地震が起きたのです。

 

地震がなかったら、某マンションは幽霊マンションと化してしまったかもしれません。何しろ姫路市内に勤務する人にさえ人気がなかったのですから。バブル経済が終わり、4~5年を経過していた1995年でしたから、姫路市民の通勤圏内には一戸建ても手の届く範囲に価格は下落していたので、郊外のマンションに人気が集まらないのも道理でした。

 

地方都市では、中心地から車で30分は「とても遠い」という感覚なのです。JR山陽本線と私鉄の山陽電車も東西に走っていますが、自家用車とバスが通勤・通学の中心手段の都市ですし、神戸などの市外に通勤する人もないわけではないのですが、せいぜい隣町までで、過半は市内通勤なのです。

 

姫路市は、兵庫県内第二位の人口(50万人)を擁する都市であり、東京では江東区か板橋区くらいの規模の街です。然るに、区内に住み区内の職場に通うのに「30分」は遠いと感じる感覚を知った東京人には理解できないはずですが、それが普通なのです。地方都市はどこも同じようなものです。

 狭い行政区に人口が集積している東京と異なり、地方都市のは人口密度が低いので、少し車を走らせると遊休地や畑が多く、よく言えばのどかですが、別の見方をすると寂しい・田舎という表現になってしまうのです。

 

 

文が少し間延びして来ましたが、姫路市の話を登場させたのは、要するに人の居ない場所、通勤に不便な場所にはマンション需要は少ないので、中古マンションとして売却するとき、期待通りには売れないと覚悟した方が良いことをお伝えしたかったのです。

 

●人口が減れば、東京圏の各都市も地方都市化する

東京、なかんずく都心3区(千代田・中央・港)は人口が増加しています。他の区も増加が続いています。全国的な傾向とは裏腹の東京、ご存知の通りです。

 しかし、東京も郊外都市は人口減の傾向が忍び寄っています。東京都の人口将来推計を読むと、2040年には全体で6.5%減少するというのですが、市区町村別にはプラスの中央区や港区もある一方、15%以上も減少する、中には25%減の都市もあると予測されています。それらは例外なく23区の外です。

 

人口が少なくなる街では市町村税も減り、行政サービスも低下します。民営の各種サービス業や商店も採算が採れなくなり、やがて撤退の方向へと歩むことでしょう。ご存知のように地方都市ではシャッター通りなどと揶揄されている商店街などがあることはよく知られていますが、首都圏の郊外でも同じような運命にあるのです。

 街の活気を取り戻そうと知恵を絞って試行錯誤を続けている街の例を見聞きしますが、抜本的な成功を収めているところはあるのでしょうか?根本には、人口が増える街を目指すこと、そのためには街の魅力を高め移住者を増やす目標があるはずです。

 その目標を追い求めることは、よその街から移住する人を増やすことでもあります。結果的に廃れる街と発展する街とに分かれて行くのです。都市間競争ということでもありますが、都市内のエリア間競争でもあるのです。

 

全国の地方自治体で「コンパクトシティ構想」が練り上げられつつあると聞きます。

 簡単に言えば、「みなさん駅前に固まって暮らしましょう。駅前に行けば、従来通りに銀行も郵便局もあります。スーパーも商店街も、様々なイベント会場も町の出張所もありますよ。何かと便利です」――こう叫んでコンパクトな街づくりを目指そうということです。

逆に見れば、駅前(とは限りませんが、機能集積地のこと)以外は不便になる、不便で活気のない街には誰も移りたがらない、従って不動産・家の需要はどんどん減少してしまうということです。資産価値の低下は見るべくもないでしょう。

 

●マイホームは何のため?

月並みなな言い方ですが、住まいは生活の基盤です。寝床であり、食事をしたりお風呂に入ったり、子育てをしたり、近くの学校に通って勉強したり、会社に行ったりする拠点です。

 

苦痛やストレスをできるだけ感じずに快適な暮らしを送れるならば、どの町に住まいを構えようが、またマイホームであろうと賃貸マンションであろうと人それぞれです。しかしながら、賃貸マンションに住むよりはマイホーム・マンションを買った方が良さそうだ、そう思って購入される人が多いのも事実です。

 また、駅前は会社に通うのに便利だが販売価格が高過ぎるので、駅から徒歩15分と遠いけれど、環境もいいし、経済的負担の少ない方を選ぶ人もあることでしょう。

 

しかし、目先はそれでもいいですが、時が経てば状況は変わります。家庭内の事情も変わるわけです。最初は快適でも、やがて不都合となって行きます。しかし、先の先まで見通すことは難しいものです。計算違いもあるかもしれません。世界のどこかで起きた事件が日本にも影響を及ぼし、あり得ないような環境変化が来ないとも断定できません。

 将棋ではありませんが、100手も200手も先を読むなど到底できるものではありません。そこで、事情の変化に応じて住み替えればいいという割り切り方も生まれるわけです。

 住み替えがしやすいのは賃貸住宅の方かもしれません。しかし、賃貸住宅住まいにはマイホームにはないデメリットもあるわけですし、一生それを続けることが良いとは思えません。そうかといって、マイホームを買った場合、たびたび移り住むというわけにも行きません。売買は賃貸ほど簡単ではないからです。

 とりわけ、売りたい金額で売れるかが問題です。永住できそうな場所に買えればいいのかもしれませんし、いつでも買いたい人が列をなして待っていてくれるような人気マンションでも持てれば別ですが、そうでない場合は、やはり売りやすいマンション、できたら買い値から大きく値下がりしないようなマンションを選ぶ方がよいはずです。

 

一生ここに住み続けるから資産価値がゼロになっても構いませんと仰る方にも1年に一人くらいはお目にかかるのですが、筆者は疑問を感じます。

 

行政サービス(ゴミ回収の回数が減ったり、置き場所が遠くなったり)したらどうしますか?バスの本数が減るかもしれません。近くのスーパーマーケットがなくなるかもしれませんよ。転勤がない会社だか今は大丈夫だとしても、その会社に見切りをつけて転職したいとなったとき、都合よく魅力ある会社を同じようなエリアで見つけられるでしょうか?

 

永住するつもりだったが、まさかの事態が発生して別の町に移住することになったとか、郷里に帰る必要はおきないでしょうか? 想定外のことが起きて遠くへ移住するというとき、元の住まいはどうなさるのでしょう?無価値になっても構わないという気で買った家だったとしても放置するわけには行かないでしょう。

 できたら少しでも現金になったらいいと思うのが普通ではないでしょうか?まして、住宅ローンが完済できていない段階でまさかのことが起こったとしたら、返済を続けなければなりません。賃貸すればいい。そうですね。しかし、借りてくれる人は見つかるでしょうか? 賃貸するには、何年かおきに室内のリフォーム代も馬鹿になりませんよ。

 

こんなふうに思いを馳せると、購入した家の資産価値、言い換えると人口減少時代が来ても、買い手と賃貸に心配のない場所に構えるのことが大事と分かるのではないかと思います。

郊外都市・地方都市では、できるだけ駅前(とは限りませんが)などの、将来も廃れにくいエリアを選んで買われる方が良いと言えます。 

・・・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございます。

 

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