第59回 築45年マンションいつまで住める?

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このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています

 

 

「マンションというのは、手入れさえすれば何年でも住める」という声をときどき聞きます。また、「鉄筋コンクリートの建物で世界最古のアパートがフランスに現存するそうで、築100年を超える。そのくらいの実績はあるのだから、100年は持つだろう」と語る専門家もあるようです。

本当に、100年も住み続けることが可能なのでしょうか?

 

カギは、手入れにかかる費用にあるのではないかと思うのです。老朽化が進むに連れて修繕費は嵩み、積立金不足に陥るのではないか? そうなれば、老朽化の進行を止めることができなくなって住みにくい状態になる。そうなると、放置されることになるのではないか?

 

マンションは、寿命が近づくに従い、不具合があちらこちらで露呈してきます。排水不良や水勢の低下、壁面の劣化・タイルの剥離・崩落、サッシ周りに隙間が発生して風が入り込む、換気装置の機能不全などが目立ってきます。

 

とりわけ、コンクリートのひび割れが雨水の浸透を許し、鉄筋の錆び、そして膨張、爆裂といった症状は、耐震性の劣化にも重なります。そして、雨漏り、結露、ジメジメ感といった住み心地を悪化させる現象が増えて来ます。

 

何十年も経つと、応急措置を繰り返して来たものの、たび重なる修繕に根本的な対策の必要度が増して行きます。

不具合があまりにも頻繁になると、修繕の意欲も薄れ、劣化した箇所を放置したまま、すなわちメンテナンス放棄という事態もあり得ます。管理費の滞納や修繕積立金の枯渇などが、これに拍車をかけます。

 

日常管理もおろそかになり、共用部分にゴミが溜まり、自転車置き場が雑然としたまま、壊れた機械式駐車場は使用不能、メールボックスの投函扉は半分開いたまま。エレベーター内部は傷だらけで汚れもひどい。

 

入居者の中には、あまりにも住み心地が悪いので、やがて賃貸するか売却して住み替える道を選ぶ人が出てきます。

賃貸戸数が増えますが、賃料が高くないため、入居者の質が問題になったりします。それが更に住み心地を悪くさせます。

 

すべてのマンションがそうなるわけではありませんが、入居者が足並みを揃えて維持管理に関心を持ち、お金(修繕費)をかけて改修を適切に行ないながら、また管理規約をしっかり守って共同生活を営み、共用部分も我が家の一部としてみんなで慈しんで行けば、50年経ても快適な住まいであり続けることでしょう。

 

しかし、現実はそうならず、50年も経つとマンションはスラム一歩手前に陥る可能性が高いのです。そのような状態になったら売却金額もしれています。二束三文と覚悟した方がよいかもしれません。

 

●マンションが分譲のカタチで登場してから50年を経過した今

50年前、筆者はこの世に生を受けていましたが、マンションには住んでいなかったので、当時のマンションがどのようなものであったか正確には分かりません。しかし、都心でマンションが分譲されると、社会のエリート層や海外生活経験者が購入して住んでいたそうです。

 

公団住宅や民間賃貸マンションなどに鉄筋コンクリートの集合住宅は既にありましたが、分譲は数が少なかった時代のこと、昭和41年(1956年)に四谷コーポラスという名の、最も古い分譲マンション(とされる)が完工しました。この物件は現存しています。

 

その後、秀和レジデンスというシリーズのマンションが一世を風靡したそうですが、こちらも分譲マンションの草分け的な存在で、今も都区内各地に多数見られます。

 

これらはもう築50年前後、四谷コーポラスは60年を超えました。それぞれの住人に取材をしたわけではないので確かなことは分かりませんが、まだ十分住んでいけそうな気配です。耐震性能がどうか、診断を受けたか、その結果はどうだったか、耐震補強工事を済ませたか、その費用はスムーズに捻出できたのか等々。疑問は尽きませんが、今も堂々とした構えを見せています。

 

秀和レジデンスは壁とバルコニーデザインに特徴があるので、それと直ぐ分かるのですが、外壁を最近塗り直したらしいことも分かります。

 

ライオンスマンションも歴史の長いブランドなので、初期の物件はそろそろ50年が近付いているはずです。初期のマンション業者で最も数多く分譲したのは商社の日商岩井(現、双日)だったことが記録に残っています。初期は、不動産業者以外の参入が多かったようです。

ライオンズの大京(その頃は大京観光)も、別荘分譲が主力商品でマンションは多くなかったのです。

 

商社の中では日商岩井が際立っていましたが、伊藤忠、丸紅、蝶理、ニチメンといった総合商社が右習えでマンション分譲に参入した時代がありました。

 

そして、その設計と施工を数多く担ったのが、長谷川工務店(現、長谷工コーポレーション)でした。

 

デザインも同じで、個性もくそもない規格型のマンションが大量に登場したのです。長谷工自身も、自ら土地を買って盛んに分譲していました。この頃が、第二次マンションブームと呼ばれた時代で、マンション大衆化時代の本格的な到来だったのです。

 

最近、筆者に届くお便り(マンション評価サービスのご依頼)には、築40年~50年の物件が増えています。どうしたわけかと考えてみると、それだけ古いマンションが市場に数多く出始めていること、すなわち古いマンションが増えていることの表われと気付きます。

 

ご依頼の中で築50年超の物件はまだそれほどでもないのですが、築40年以上は目立っています。あと数年経つと築50年マンションも続々と登場して来ることになると予想できます。

 

今後は、そのレトロな物件を検討する読者もあることでしょう。そこで、このブログが役に立つことを祈りつつ、機を見て気付いたことを記事にして行こうと思います。

 

 

●度重なる修繕費

(平成16年)エレバーター改修費・・・350万円

火災感知器交換・・・・・141万円

消火栓ホース交換・・・・25.7万円

        (計 517万円)

(平成18年)電気設備改修工事・・・31.7万円

 (計 31万円)

(平成19年)エレベーター改修費・・・409万円

外壁漏水補修工事・・・ 71万円

汚水排水管交換・・・・209万円

000号室漏水補修・・・・71万円

(計 760万円)

(平成20年)排水管改修工事設計・・・184万円

屋上防水工事・・・・・619万円

(計 804万円)

(平成21年)消防設備改修工事・・・・・・・129万円

プランターボックス補修工事・・・42万円

電気設備改修工事・・・・・・・37万円

屋上物干し撤去工事・・・・・49万円

(計 258万円)

(平成22年)排水管更新工事・・・4510万円

地デジ導入工事・・・182万円

(計4692万円)

(平成24年)大規模修繕改良工事・・・6947万円

 (計 6947万円)

 

これは渋谷区にある60戸の某マンションの実例です。築40年を超えています。 修繕費が次々に出て行き、対症療法的な延命策が限界に来ているらしいことが読み取れます。

 

平成16年から平成24年までの9年間に1億4000万円の修繕費がかかっています。

 

1軒当たりにすると、約233万円となります。平成24年だけでも116万円を要しています。

 

平成25年3月31日現在の積立金残高は約1146万円とありました。5年後の現在、仮に5000万円に増加しているとして、1軒当たり80万円余しかないことになります。

これでは大規模修繕ができるかは微妙なレベルです。できないと見た方がよさそうです。当分はやらない・やれないということになるのではないか、他人事ながら心配をしてしまいます。

 

このマンションには、耐震性の問題もあるのですが、それと同じくらい、余命の問題があるのです。

果たして、あと何年快適に住んで行けるのか、不安を排除できないマンションです。修繕が度重なる状況に至ってしまっているからです。

 

中古マンションの購入を検討するとき、修繕積立金が不足して来る懸念はないか、その調査は必須です。もし、費用の問題が壁となって改修工事が適切に行われなくなれば、住まいとしての快適性は失われることになりかねません。

賃貸が可能としても、賃料を高く取るのは次第に難しいことになるでしょう。

 

としたら、資産価値が極端に下がる状態が来る前に見切る、つまり売却するという判断が重要と考えます。

そうなると、次は損なく売却が可能かどうかというテーマで検討しなければなりません。

内外装ともに綺麗な状態で売るには、早い方が良いこと、もしくは次の大規模改修の時期を見計らって売りに出すということも視野に入れるべきでしょう。

 

 

●寿命の短い物件は不具合が頻繁に起きる

最近の新築マンションは、高強度コンクリートを採用し、かつ耐久性の高い工法を用いて75~90年の耐久性を謳う物件が増えています。

 

これに対し、古いマンションは耐久性で劣るものが多く、メンテナンスを怠ると築後40年ほどで真剣に建て替えを検討しないといけない状態になってしまうと言われています。雨漏り、結露、タイルの剥離、給水の異常など、不具合が度々発生するためです。

 

築30年40年の古いマンションを買ってしまうと、そこから20年もしないうちに煩わしい問題を抱え込むことになるかもしれないのです。

 

それまでの修繕履歴をチェックし、度々起きている問題がないか、どのような修繕工事を施して来たか、中でも排水管の洗浄や交換といった工事をしたことがあるかどうか、雨漏りがなかったかどうか、結露が出て売主や施工会社ともめたことはなかったかどうか等々の記録を見つけることが重要です。

 

素人では難しいので、専門家に見てもらうことが必要になるでしょう。

 

修繕積立金が枯渇していれば、新たに一時金を徴収するか銀行から借入れして毎月の返済分を毎月分の値上げで対応することになるかもしれません。古くて修繕費が少ないマンションは要注意です。

目安は、1軒当たり100万円以上の残高を持っているかです。大規模修繕工事を終わったばかりで3年経っていないマンションなら50万円以上といった額と覚えて置かれるといいようです。

 

総額で1億円あっても戸数が200戸あれば1軒当たり50万円です。50戸のマンションなら5000万円しかなくても1軒当たりにすれば100万円なのです。

 

長期修繕計画書の「収支バランス」を分析しなければなりません。

 

 

●賃貸住戸の比率が高いため、管理状態が悪化する恐れも

最初は全戸自己居住用であったものが、時間が経つと転勤その他の理由で転居する人が増えて行き、そのあとを売却するだけでなく、賃貸するオーナーも増えて行きます。

 

分譲マンションなのに賃貸マンションのようだ。そのような感想を述べるオーナーの多いのが、古いマンションの特徴です。

 

賃貸で居住している人は、自分の家ではないので管理意識が高いとは言えません。また、居住モラルが低いマンションもあります。モラルが低いマンションは、整理・整頓・清掃が乱れて綺麗な状態を保つことが難しくなります。それがマンションの雰囲気を悪くしてしまったりもします。当然、価値が低下します。

 

更に、どこか遠くへ行ってしまったオーナーは、保有マンションの現状を見ていないため、管理に熱心になることはなさそうです。

こうしたことが、メンテナンスの軽視と実施の遅れにつながり、マンションの寿命を一層短くしてしまう恐れがあるのです。

 

以上のような懸念があれば、古過ぎる中古マンションには、長く住めないかもしれない、そう覚悟して購入することが必要と言えるでしょう。

 

 

・・・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございます。尚、この記事は第44回旧・耐震基準のマンションを買う人の心理」も併読いただくとよろしいかと思います。

次回は、「築40年マンションを選択する英断」についてお送りします。

 

 

 

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