スムログ読者の相談メールを読んでいると、マンション価格が高騰していることに加え、管理費や修繕積立金の高さを嘆く声が散見される。
※読者からのコメントを受けて、「マンション規模の影響」を追記しました(22年10月31日)。
目次
管理費・修繕積立金の分布(23区新築マンション)
では、マンションの管理費や修繕積立金は安ければいいのかといえば、もちろんそんなことはない。特に、修繕積立金の月額が著しく低く設定されていると大規模修繕に必要な額が十分に積み立てられないから、将来困るのはマンションを購入した住民だ。管理費や修繕積立金の実態はどうなっているのか、調べてみた。
ライフルホームズのサイトで東京23区の新築マンションを検索すると231件がヒットする(10月29日現在)。そのうち、管理費・修繕積立金が「未定」でないのは109件。
この109件について、横軸を1m2あたりの月額の管理費、縦軸を1m2あたりの月額の修繕積立金、各円の大きさを総戸数として描いたのが次図。
※管理費・修繕積立金は各物件の発売(予定)戸数に対する平均値(総戸数に対する平均値ではない)。
※管理費の中央値は315円/m2(平均値は330円/m2)、修繕積立金の中央値は111円/m2(平均値は118円/m2)。
ザックリ言えば、管理費は200~500円/m2、修繕積立金は50~200円/m2。いずれもバラツキが大きい。
マンションごとに条件が異なるのだからバラツキが大きいのは当然だとしても、少なくも平均的な値よりも低いマンションは避けたほうが賢明ではないか。逆に言えば、平均的な値よりも高いマンションであれば、一考の価値がある。
実際にグラフを見ると、管理費・修繕積立金の中央値よりも上のエリア(オレンジ破線の右上のエリア)には、「ザ・パークハウス 広尾」や「パークホームズ荻窪三丁目」、「ブランズ上目黒諏訪山」や「ブランズ愛宕虎ノ門」といったブランド力の高いマンションが名を連ねていることが確認できる。
【追記】マンション規模の影響
※追記22年10月31日読者から次のコメントを頂戴した。
マンション規模にもよるので管理費、修繕費が高ければ相対的に良いというのはあまりに短絡的すぎるのではないですか?
私は「管理費・修繕積立金共に高い物件が全て良い物件であるとは限らないが」と断ったうえで、「管理費・修繕積立金の相対評価の参考にはなるのではないか」と控えめな表現にとどめていたのだが……。
読者から貴重なコメントを頂戴したので、管理費・修繕積立金は総戸数や階建てといったマンションの規模の影響も受ける可能性があるので、さらに深掘りしてみよう。
総戸数が管理費・修繕積立金に与える影響
一般論として、総戸数が多いほど、スケールメリットが得られるので、管理費・修繕積立金ともに低下することが期待できる。では、今回調査対象となった109件はどうなのか。
横軸を総戸数、縦軸を1m2あたりの月額の管理費・修繕積立金として描いたのが次図。
総戸数が多いほど管理費が低下する傾向は見られるが、修繕積立金のほうは低下傾向は特に見られない。
※管理費・修繕積立金は各物件の発売(予定)戸数に対する平均値(総戸数に対する平均値ではない)。
階建てが修繕積立金に与える影響
一般論として、階建てが高いほど、大規模修繕では仮設費用が嵩むので修繕積立金が高くなる可能性がある。では、今回調査対象となった109件はどうなのか。
横軸を階建て、縦軸を1m2あたりの月額の管理費・修繕積立金、各円の大きさを総戸数として描いたのが次図。
階建てが増えても、修繕積立金が増加する傾向は特に見られない。
※管理費・修繕積立金は各物件の発売(予定)戸数に対する平均値(総戸数に対する平均値ではない)。
管理費・修繕積立金ともに高い物件をリスト化する
管理費・修繕積立金共に高い物件が全て良い物件であるとは限らないが、管理費・修繕積立金の相対評価の参考にはなるのではないか。1m2あたりの月額の管理費・修繕積立金が平均的な値よりも高いマンション(上図オレンジ破線の右上のエリア:管理費315円/m2以上かつ修繕積立金111円/m2以上)は38件。以下にリストアップしておこう。
※以下、修繕積立金の高い順。単位は管理費、修繕積立金ともに円/m2。
- 物件名(管理費/修繕積立金)
- ザ・パークハウス 広尾(445/265)
- パークホームズ荻窪三丁目(529/204)
- ブランズ上目黒諏訪山(624/200)
- THE ASAKUSA RESIDENCE(390/180)
- ザ・パークハウス 戸越公園タワー(471/179)
- パークホームズ本郷三丁目(374/178)
- ルジェンテ池袋立教通り(374/170)
- ブランズタワー芝浦(413/168)
- シティハウス綾瀬(366/164)
- プラウド文京千石スクエア(354/163)
- グランドメゾン目白坂テラス(377/155)
- シティタワー虎ノ門(984/154)
- パークホームズ文京小石川 ヒルテラス(315/153)
- グランリビオ市谷砂土原(484/152)
- ブランズ愛宕虎ノ門(611/151)
- プラウド山王二丁目(496/150)
- HARUMI FLAG(317/149)
- プラウドタワー亀戸クロス(386/149)
- ライオンズミレス蔵前(385/146)
- リビオレゾン三ノ輪パークフロント(428/140)
- オーベルアーバンツ両国(373/140)
- ピアース大井仙台坂(329/140)
- バウス新中野(396/140)
- セントラルレジデンス東中野(473/139)
- アトラスタワー五反田(538/135)
- シティハウス南大塚テラス(407/132)
- ザ・パークハウス 麹町レジデンス(472/130)
- パークコート渋谷 ザ タワー(494/130)
- シティタワー武蔵小山(382/128)
- プラウド町屋(330/124)
- リビオレゾン三田(355/120)
- シティタワーズ東京ベイ(381/120)
- ライオンズ南千住グランプレイス(387/119)
- シティハウス平井サウス(404/118)
- シティハウス池袋(350/115)
- シティテラス文京小石川(383/114)
- ブランズ牛込柳町(350/113)
- シティハウス浅草橋(362/111)
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マンション規模にもよるので管理費、修繕費が高ければ相対的に良いというのはあまりに短絡的すぎるのではないですか?
まんおたさん、コメントありがとうございます。
「マンション規模の影響」につき、追記しておきました。
こんにちは
毎回参考になる情報ありがとうございます。
お願いがありまして、修繕積立金には駐車場収入要素も大きいと考えています。
私のマンションは築25年で約300戸の板マンです。
修繕積立金は新築時(平米100円)から変わりませんが、自走式駐車場が新築以降9割以上埋まっていることあり概ね財政は良好です。
(もちろん昨今の物価上昇は当時の検討には入っておらず)
都心や最近の首都圏新築マンションは駐車場設置率が低く、かつ機械式が大半と存じます。
修繕に関してはこの違い観点でも解説いただけると嬉しいです!
まめんちさん、コメントありがとうございます。
修繕積立金における駐車場使用料の影響も無視できませんが、可視化分析するための有用なデータが見当たりません。
どなたか、有用なデータ(公的データであればベター)ご存じありませんか。
コメント返信ありがとうございます!
うちは70平米で以下です。
・管理費9800円
・修繕積立金7500円
・平置き駐車場10000円(充足率約9割程度)
駐車場維持コストが低廉なので駐車場収入はほとんど純粋収入に近い状態です。
駐車場収入を修繕費用として収入カウントすれば、空きや維持コストを反映しても平米200円ほどにはなると考えていました。
もちろん将来の駐車場空きリスクはありますが、仮にこのくらいの稼働率を維持すればなんとかなるかと思いますが、感覚的にいかがでしょうか??
自分もエビデンス資料探していますm(_ _)m
まめんちさんのマンションの詳細が不明ですので、正常性バイアス(自分にとって都合の悪い情報を無視したり過小評価したりするという認知の特性)があるのか否か断言できませんが--
リスク要因としては、
①今後も稼働率9割程度を維持できるのか
②物価高騰リスク(←こちらのほうが影響大)
などが考えられます。
ホントに稼働率9割程度を維持できるのか。
たとえば、稼働率が6割になると修繕積立金+駐車場収入は200円を下回り193円(=107円+86円)になります。
※193円 =7,500円÷70m2+10,000円×0.6÷70m2