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次のようなお便りをいただきましたので、ご指名により三井健太がお答えします。

 

(間取りに関する質問です)

どうしてマンションには寝室が共有廊下に面しておりかつ十分な防音性が確保されていないのが大多数なのでしょうか。

海外駐在から帰国しファミリーマンションで探しているのですが、田の字で一番広い部屋を廊下側に配置している間取りがとにかく多く、住民の皆さん夜はどうしているのかと疑問です。自分は内廊下になっているタワマンに決める予定ですが、不動産屋の方に聞いても寝室のことを気にされる方はほとんどいませんと言われ、謎は深まるばかりです。

ちなみに赴任先は2カ国ともアジアでしたが寝室の窓が廊下に面してる間取りはありませんでした。

 

(お答え)

諸外国との比較で、日本の集合住宅・マンションは、誰が命名したか分かりませんが、邸宅という英語から取ったものです。

ちなみに、英国ではフラッツ・米国ではコンドミニアムと呼ぶようです。

 

日本の集合住宅マンションは、邸宅とは名ばかりの残念なものが多いと言えるでしょう。特に広さ・間取りは、まあ90%以上が残念と言って過言ではありません。筆者も、自著の中で良い間取りを紹介していますし、ブログ「三井健太の名作間取り選」でも特集していますが、中には名作もないことはないのです。

 

ご指摘の通り田の字型と呼ばれる間取りが多いのは事実ですが、どうして田の字にしているかと言えば、コストが最大の理由です。良い間取りを作ろうとすると、どうしても変形になります。変形は、表面積を増やします。表面積が増やすとコスト増に直結するのです。

 

一例は「アルコーブ」です。アルコーブとは本来は室内の壁を引っ込ませて設けた小部屋というほどの意味らしいのですが、これを玄関の引っ込み部分に転用して命名したと言われています。廊下から見たとき、玄関を窪ませなければ、木造の賃貸アパートのようになるから、それでは商品価値が低く見られるだろうと、窪みを設けたのです。

 

最近は、このアルコーブさえやめてしまった残念なマンションも新築で再登場しています。

 

間取りが残念なタイプになるのは、東京の地価(用地費)の高さが尋常でないからです。マンションの価格は、用地費+建築費+販売経費+利益という構造になっていますが、それぞれの比率を東京都に限って大まかに言えば。4:4:1:1です。

用地費が異様に高く、建築費を極力減らさないと分譲価格が高過ぎて売れない。そう考えて残念な設計がはびこっているのです。

 

そうかといって、シンプル過ぎる安上がりのマンションを設計してしまうと、それこそ「安かろう・悪かろう」の商品になってしまいます。 購入者の見る目も年々変わり、良い間取りと良くない間取りを見分けることができる人が増えているため、購入者の目を欺くような間取りは作れません。そこで、コストを抑えることと良い間取りを作ることの「二律背反」に挑戦して今日に至っていると言えます。

 

ご指摘はごもっともですが、良い間取り作りに重点を置くと建築費が高くなり、結局は分譲価格が高くなるので「やっぱりやめておこう」となるのです。

 

筆者も、マンションの開発・設計の実務についていたころを思い出すにつけ、最近の「田の字間取り」は残念に思う一人です。15年~20年前は、まだ建築予算にゆとりがあって、まあまあの間取りが見られたものですが、この10年、15年は分譲会社のコストカット意識が高まって残念な間取りばかりになってしまったのです。

 

お考えのようにタワーマンションならば、田の字でない間取りが多いので、間取りにこだわるのでしたら、その選択は是です。

 

以上、三井健太がお答えしました。

 

 

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