第273回 「建物のカタチで変わるマンションの住み心地」

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

今日はマンションの建物に関する基本、とりわけ間取りに関する話です。この中には、みなさんがあまり意識していなかったものもあるはずです。参考になれば幸いです。

 

1)構造と階数の差

マンションは、どれも「鉄筋コンクリート造」または「鉄骨・鉄筋コンクリート造」ですが、地震の多い日本では、耐震性の高い建物の設計、すなわち柱や梁を太く、頑丈に設計しなければなりません。

 

その昔、柱には鉄骨も必要でしたから、下層階ほど柱が太く造られることになりました。しかし、太くなればなるほど内法(うちのり)が小さくなってしまいます。それだけが理由ではありませんが、高層マンションは14階建てが限度だったのです。

近年、14階を超える高層マンションでも、鉄骨を使わない「鉄筋だけの構造」が可能になりました。強化コンクリートの発明などが寄与して、鉄骨の入らない細い柱や梁でも高層マンションの建築は可能になったのです。

 

こうして、最近はタワー型マンションも増えています。建物の延べ床面積が同じでも、高くする方が敷地に余裕が生まれるので、マンション専用の庭園が取れるなどのメリットも生み出しました。上層階には眺望の良い住戸も増えて、マンションの価値は総じて高くなりました。

 

無論、デメリットもあるので、一概に高い方が良いと断定できるわけではありません。

 

2)共用廊下による差

ご承知のように、マンションの形態には「開放廊下型」と「内廊下型」があります。

 

開放廊下型のマンションは、エレベーターで目指す住戸の階で降りると、そこは隣地の家など外の街並みが見えるだけではなく、外気に触れることになります。つまり、家に帰ったものの、エレベーターを降りると再び外に出る格好になるのです。

 

内廊下型とは、エレベーターを降りたとき、目の前に広がるのは廊下と各戸の玄関が並び、外の景色は見えないものです。つまり、1階の玄関に着けば、住戸に至るまで、ずっと室内というわけです。

 

外廊下型は雨の日は外廊下に雨が吹き込む形、内廊下型は雨が吹き込まない形というわけです。横殴りの雨が降る日は傘を差さなければならないこともある。それが開放廊下型のマンションなのです。

 

3)方角の差

昔から、日本の住まいは「南向きをむねとすべし」という言い伝えがあります。マンションの時代になっても南向きを望む人が多いのですが、近年の傾向をいえば、南向きにこだわらない人が増えています。

 

中には、眺望が良いからと、北向き住戸を選択する買い手も多いのです。南向きは太陽が照り付けるので、通風の良くないマンションでは南向きは避けて方が良い場合もあるようです。北向きだが、リビングルームから東京タワーが望めるので、敢えて北向きを選んだという人も少なくありません。

 

耐用が当たらないと寒いかもしれないが、エアコンをうまく使えば問題ない。そう考える人も少なくないようです。

 

4)階数の差

マンションは低層の良さ、高層の良さがあり、どちらの価値が高いかという議論は意味がありません。

しかし、高層の方が遠くまで見渡せる良さがあり、とりわけ概ね20階以上の超高層マンションは人気が高いとされます。ご存知のように、東京には50階建ての超高層マンションも少なくないですが、その人気は高いのです。

 

人気の要因は、遠望です。遠くまで見渡せることは、一種の快感です。初めて見学にやって来た買い手は、眺望の素晴らしさに感動すると聞きます。筆者も都心のタワーマンションを買ったことがありますが、夜景を初めて見たときは、確かに快感を覚えた記憶があります。

 

世田谷区に住んでいたときは、5階建てのマンションだったので、眺望と言えば近隣は中低層マンションと一戸建て住宅ばかりで、感動的と言えるものは何もありませんでした。あえて補足すれば、子供部屋から見える景色が新宿方面の高層ビルで夜景がきれいだったことが記憶に残っています。

 

5階建てマンションは「都市計画の第2種住居専用地域」に多いのですが、近隣の一戸建てなどに対し、一定以上の影を落としてはならないという法制限によって建てられた限界高とも言えます。

 

3階建てを超える高さの建物を建ててはならないという規制を設けている「第1種住居専用地域に指定された地域もあります。

 

タワー型マンションを選ぶか、中低層マンションを選ぶかは、買い手の価値観によるので、どちらが良いかという議論は意味がありません。だだ、地価の高い東京圏では低層マンションが少ないのは事実です。

 

5)角部屋・中部屋の差

1フロアに3戸並びの形のマンションは、少なくとも2戸は角住戸です。1フロアに4戸のマンションでも、L字型すれば、全戸が角住戸になります。しかし、このようなケースは稀有で、多くのマンションは角部屋比率が10%とか、多くても20%などとなります。

 

さて、角部屋は人気があると言われますが、その要因は、玄関側の個室の前を通行する人がいないからです。

 

開放廊下型のマンションの多くは、玄関側にも個室が1つか2つレイアウトされていますから、それらのプライバシー性には少々問題があるものです。窓からの侵入を防ぐシャッター付きマンションでは、シャッターを全開しないかぎり暗さは否めません。

 

角部屋ならば、外廊下に面さない位置に寝室を配することができます。また、玄関前の廊下に門扉を設けて外部と隔離した形にもできます。

 

中部屋より角部屋の人気は高く、価格も高いものです。買うときに高い角部屋ですが、売却する際にも強気の価格が通用するものでもあるのです

 

6)リビングルームの縦横の差

リビングルームはバルコニーに面するのが一般的です。というより、ほぼ例外なくバルコニーに面しています。「ほぼ」とお断りしたのは、40年ほど前のマンションにはバルコニーに面さない形もあるからです。

 

さて、リビングルームの前には一部の超高層マンションを除くと、バルコニーが設けられています。リビングルームだけでなく、リビングルーム横の個室もバルコニーに面した例もあります。

 

つまり、リビングルームが縦に長く横に個室が並ぶ形と、リビングルームが横長でバルコニーに面する個室がない形があります。また、バルコニーに面する個室が2つとリビングルームの計3室が並ぶ超横長タイプも稀にあります。

 

どの形が良いかと言えば、全室がバルコニーに面する超横長タイプですが、これは極めて希少です。

 

7)玄関位置による差・玄関ホールの広さ・アルコーブ

玄関が狭い家より、広い家の方が豪邸である場合が多いものです。マンションでも同じで、玄関ホールは広い方が良いのです。とはいえ、玄関ホールを広く取れば、他の部屋が狭くなってしまいます。

 

狭いマンションでは、玄関ホールを意識して切り詰めるような作為が設計者・デベロッパー側にあるのです。玄関ホールよりリビングルームなどの広さを優先したいからです。その方が売りやすいと信じているためです。

 

玄関の靴脱ぎスペースに続く部分、すなわち「玄関ホール」が狭いのは寂しい・悲しいと語る人は少なくありません。

 

マイホームは賃貸マンションなどに比べれば誇らしい住まいのはずです。それだけに、第一印象を決める玄関ホールが狭いのは残念なものです。マンション購入は自己実現のひとつの形ですから、玄関ホールの広さを軽視しない方が良いでしょう。

 

賃貸マションと異なり、玄関ドアは廊下から一歩中に入り込んだ(窪んだ)位置に設けられることが多いものですが、これを「アルコーブ」と呼びます。窪んだ小部屋という意味ですが、デザイン性だけでなく、廊下を走って来た子供が扉を開けた瞬間に衝突することがないよう、危険防止の意味もあります。

 

「横入り玄関」の話も付け加えておきます。

扉の位置で言えば、廊下と並行位置にあるものと、横から入室する形にしたものがありますが、横から入る形は、玄関ドアを開けても住戸の奥が見えてしまうことがないものです。その面では良い間取りです。

 

8)開き戸と引き戸の差

和式の引き戸と洋式の開き戸がありますが、それぞれどのような特徴があるのでしょうか?

玄関ドアは例外もありますが、マンションの場合は99%以上が開き戸です。そして、室内の扉も洗面所を除くと、開き戸ばかりと言って過言ではありません。

 

例外的に「折りたたみ式の扉」もありますが、こちらは、引き戸と開き戸のミックスタイプと見れば良いでしょうか?

 

個室の扉を引き戸で設計した物件もときどき見られます。引き戸にした方が扉の近くに物を置いても出入りがしやすいというメリットがあるためです。コンパクトな間取りで採用されることが多いようです。

 

9)収納の差

収納スペース、すなわちクローゼットや納戸、押入れといったものですが、このサイズが大きいほど室内がすっきりとします。

収納スペースを広く取りたい一方、収納スペースを除いた各部屋の空間面積も確保しなければなりません。

 

しかしながら、全体の面積を動かせない中で、いかに収納スペースを確保するかに設計者は知恵を絞ります。

 

玄関に設ける「シューズインクローク」も、女系家族では靴の数も多いので、必須のアイテムになっています。

 

10)脱衣所の出入り口の差

洗面脱衣室の位置は、廊下にあるのが普通とされて来たものの、近年はダイニングから出入りする例も増えています。間取りレイアウトを考えるうちに、必然的に生まれたものですが、これには問題があります。

 

お年頃の娘さんは、入浴のたびに父親に風呂上がりの姿を見られるのが嫌だと言います。一方、主婦の立場では、洗面所にはたいてい洗濯置き場があるので、キッチンから出入りしやすい位置にあった方が便利と感じる人も少なくないのです。

 

洗面脱衣室は、廊下からとキッチンからの、二つの動線があった方が良いのでしょう。そんな間取りも少なくありません。

◆   ◆   ◆   ◆   ◆

分譲価格の高い東京では、専有面積の狭いマンションを作らざるを得ません。その中に、魅力あるレイアウトをいかにするか、マンションデベロッパーの創意工夫は続きます。

 

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・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。次は10日後の予定です。

 

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