第270回 「使わない共用施設など興味ない」・・それってどうなの?

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

マンションの開発実務と販売の両方を経験して来た筆者は、共用施設を設けることの意味を良く知る一人です。共用施設は、おいしい食事を一段とおいしく、かつ楽しむためのレストランのインテリアやテーブルと椅子のようなものです。

 

筆者は自宅マンションの売買遍歴から、小型マンションと大型マンションの違い、言い換えると、共用施設の不十分なマンションと豊富なマンションの違いを良く知る一人です。

 

どちらが優れているかは別として、住む人の価値観によって、「選択されるマンション」と「選択されないマンション」に分かれます。とはいえ、市場では、圧倒的に大型マンションが支持されています。

 

今日は、使いもしない共用施設に対して否定的な姿勢を語る買い手を念頭に置きつつ、改めて「大規模マンションって何だろうという話をしようと思います。

 

共用施設はなぜ必要なの?

30年以上も前、マンションの共用施設と言えば、エントランスホールと集会室くらいだったようです。100戸程度では中規模と言うべきですが、集会室(コッミュニティラウンジ)はっても、それ以外は何もないものが多いようです。

 

その昔と言うべきかもしれませんが、筆者がデベロッパーの社員だったころ、集会室以外の共用施設が鮮烈な印象として思い出されるのは、付き合いのあった別の企業が打ち出した「コミュニティホール」を見学したときでした。

別棟の形で敷地内に設けたものでしたが、まるで体育館のような広さがありました。そこでは、住人がスポーツやフィットネスを楽しむことができるように、いくつかの用具もあったと記憶しています。壁の一部には大きな鏡もありました。

 

別室には、インフォメーションカウンターがあってコンシェルジュが待機していました。住民へ様々な案内をしていたのです。デベロッパーの説明では、アメリカの集合住宅ではコミュニティサービス施設として定番の施設だったようです。

 

その後、大型マンションでは施設だけでなく、「コミュニティサービス」が普及し、定着しました。つい最近、調査依頼のあった港区のマンションでも以下のようなサービスや共用施設が紹介されていました。

 

*「バーラウンジ」、「屋上テラス」、「プール」、「スパ」、「セラピーブース」、「キッチンスタジオ」、「ゲストルーム(4室)」があり、「バーラウンジ」では、お酒・お料理の提供や「キッチンスタジオ」では、パーティを開催することもできます。

 

*「スパ」「フィットネスジム」では、ドライサウナ、露天風呂、ジェットバス等があり、眺望の良い最上階33階のフロアすべてを共用スペースとする大規模マンションならではの充実した共用施設があります。

 

*2階レセプションには、コンシェルジュカウンターがあり、長期不在宅の荷物預かり、コピー・FAXサービス、ハウスキーピング・クリーニング、花・緑の宅配、レンタカー、ベビーシッター等取次ぎなどのサービスにより、日々の暮らしをきめ細やかにサポートしてくれます。

 

共用施設を削ったら分譲価格は5%下げることができる?

マンションを開発分譲する側から見ると、共用施設を削れば価格を5%程度下げることができるメリットがあります。共用施設を増やせば、逆に5%の価格アップもあり得るからです。

5000万円のマンションを4750万円に下げることができるので、たった5%とは言えない意味を持ちます。

 

用地費の高騰、建築費の高騰が続いて来た昨今、共用施設を削ろうとする風潮が業界内にあるようです。高値のマンションは売れないので、ギリギリまでコストダウンを図ろうとしているようで、魅力のないマンションが増えています。

 

共用施設に目をやると、せいぜいエントランス脇の「小さなホール」がある程度であることに気付きます。2%程度でも分譲価格が高くなることを嫌うデベロッパーが多い現況にあるのですが、これは、競合マンションを意識しているだけでなく、売れ行きの低迷が続いているので少しでも単価を下げたいと意識するためです。

 

ビジネスホテルと高級ホテル

共用施設の是非は、ホテルに例えて考えると分かりやすいかもしれません。

 

ホテルにはランクがあり、星の数で表すことが知られています。超高級ホテルには5つの星が冠されています。東京で5つ星ホテルと言えば、「マンダリンホテル」や「パレスホテル」、「帝国ホテル」、「シャングリラホテル」、「ホテル椿山生」などを思い浮かべることでしょう。

 

広いロビーや、いかにも高級なインテリアと調度品を揃えたレストランやカフェラウンジ、長いレセプションカウンター、洒落たカート(台車)を運ぶポーターの姿などを思い浮かべる人もあるでしょうか。

 

ツインのベッドがあっても狭く感じられない広さの客室はモダンヨーロピアンスタイルの内装、厚いブルーガラス張りのバスルームには、レインシャワー付きのセパレートシャワーブースがあるバスルームは広く、お洒落な化粧室といった設えも日本人なら大抵イメージできるはずです。

 

他方、ビジネスホテルに目を転じてみると、ロビーは狭く、室内のしつらえもシンプルで豪華さのかけらもなく、広さを切り詰めた効率優先の姿が一般的です。

 

可能なら、ビジネスホテルよりラグジュアリーホテルに泊まりたいものですし、マンションも可能なら高級タイプを選びたいと考える人は少なくないはずです。

 

マンションはホテルと違うという声もあるが

しかし、「マンションはホテルとは違うのだから、使いもしない共用施設なんて要らない」という声もときどき見聞きします。

 

地価の高い日本では、日本らしい住宅の形を模索しながら今日に至っています。

物資のなかった時代、住宅も例外ではなく、あっても6畳一間の借家に親子4人が寝起きするのが当たり前だった時代から、マイホームを持つことが普通になった今日までを辿ると、「欲求レベル」の向上はめざましいものがあります。

 

残念ながら広さのレベルは、欧米諸国から揶揄された「ウサギ小屋」から脱出できていませんが、木造賃貸アパートに住む人は大幅に減り、居住性は格段に高まったと言えます。

 

それでも家賃は高く、狭い部屋で暮らすことを強いられています。しかし、そこには限界があるのでしょう。やがて狭い賃貸マンションを脱出しようと図る人が後を絶ちません。

 

購入の検討を始めると、真っ先にローンで買っても返済額は思いのほか少ないことを知ります。そして、賃貸マンションにはないスケール感や高級感、住戸内設備の違いに気付きます。同時に、分譲マンションには、賃貸マンションにない「贅沢な共用スペース」があることも知ります。

 

そのとき、何割かの人は「こんなものは要らない」と感じるようです。なぜそう思うかははっきりと分かりません。とはいえ、何人かの声を整理してみると、「自分は使わないから」という理由にたどり着きます。

 

「購入する人の好み」と言えばそれまでですが、筆者は将来の売却をいつも念頭に置くので、共用施設を軽視してはならないと。つい反論したくなります。

 

我がマンションにはエスカレーターがある

共用の設備で圧巻なのはエスカレーターです。東京都心の超大型タワーマンションに見られる特徴ですが、これに驚かされる人が少なくありません。

 

そんなマンションを買った人は、特別なマンションに住んでいる自分を誇らしく思うようです。

 

人間の欲求には5段階があると言われます。アメリカの心理学者、アブラハム・マズロー(1908~1970)が考案したもので、「マズローの欲求5段階説」「自己実現理論」などと呼ばれることもあります。

 

マズローの法則によれば、人間の欲求には「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求(所属と愛の欲求)」「承認欲求」「自己実現の欲求」の5段階があります。そして、これら5つの欲求にはピラミッド状の序列があり、低次の欲求が満たされるごとに、もう1つ上の欲求をもつようになると説明しています。

 

日本が戦後の経済成長を経て世界第二位のGDPを達成したとき、欲求の段階も高いレベルを求めるようになっていました。マイホームも、戦後の住宅難も、経済成長に連れて解消が進みました。

 

しかし、その過程で地価の高騰を招き、住宅価格も高騰しました。小さな土地しかない建売住宅でさえ庶民には手が届かない状況となってしまったのです。その状況がマンションを支持する階層を拡大して、やがてマンション主流の時代を迎えます。

 

分譲マンションが登場したのは、戦後10数年のことですが、本格的な普及は、30年を過ぎた、1970年代になってからです。振り返ると、初期のマンションは、住戸面積が狭いだけでなく、耐久性も耐震性も問題があり、設備・仕様のグレード感も見劣り感が強いものでした。

 

しかし、それから50年を経過した令和の現在、マンションの品質も買い手の意識、価値観も大きく変わりました。

 

誇りある我が家とは?

賃貸マンションは、いわば仮の住まいですし、家賃は捨てるだけです。そのせいでしょうか、背伸びして高額家賃の洒落た広いところを選択する人は多くありません。

 

購入するマイホーム、マイマンションとなると話は別です。高額であり、当然ながら毎月の負担も小さくはありません。しかしながら、マイホームは資産形成に一役も二役も貢献することが知られています。

 

そのせいもあって、「買って損はないかどうか、あわよくば儲けられるか」といった観点からマンション選びをしようと考える人を増やしています。

 

分譲マンションは単なる賃貸マンションの代替品ではないのです。いつか売るときがあるかもしれないので、損のない物件を選びたいと考えるのが普通です。

転勤で地方に住むことになったとき、東京に戻るときまで賃貸するとして、その家賃と住宅ローンとのバランスはどうか、そんなことに気をもむ人も少なくありません。

 

小型マンションで誇れる点があるとしたら

小型マンションに住んだ経験を持つ筆者ですが、当時を思い出しながら、良かった点について、検討過程を家族間の対話形式に変換してみました。

 

買い替えの話が出た時、妻は最初のマンションに入居してから、初めて日頃の不満を語り始めました。

 

妻     「このマンションって400人くらいの人が住んでいるでしょ。エレベーターで会っても、どこの誰だか分からないのね。こんにちはとか、おはようございますの挨拶を交わす人もいるけど、知らん顔する人もいて、感じ悪いって思うわけ。次は、もっとこじんまりしたマンションがいいわね」

夫     「へぇ~。そんなふうに思って暮らしていたんだ」

妻     「そうよ。でも、それは大したことではないの。それよりヒドイと思うのは、ルールを守らない人がたくさんいるってこと。ゴミ出しの時なんか、袋を放り投げていく人がいて、破けて中から生ゴミが飛び出して来るなんてしょっちゅうだし、

夫     「ふぅ~ん。いろんな人が住んでいるからなぁ」

妻     「でも、ルールは守ってもらわなくちゃあ」

夫     「こじんまりしたマンションなら、そういうことはなくなるのかなぁ?」

妻     「ええ、そうよ。だって、20軒とか30軒とかのマンションだったら、1年もすれば大体何階の誰とか分かるから、お互い気まずい思いをしたくないでしょうし、きっとルールを守るようになるわ」

夫     「お互い干渉し合わないのがマンションの良さのようにも思うけどなぁ」

妻     「あら、こういうのは干渉とは違うわよ。たとえ挨拶しか交わさないような関係でも、同じ屋根の下に居る住人同士という意識があると、ルールを守るのは当然としてお互いに気配りというか、思いやりというか、そんな気持ちで暮らすことになると思うわね。それが、心地良さじゃないのかしら。その点、このマンションは住人らしいと知られていても、大勢住んでいるから一人くらい悪いことしても分からないって感じで……」

夫     「そうか。そんな思いで6年も住んで来たのか。ちっとも知らなかった」

妻     「だって、そんな愚痴を言っても始まらないもの。それとね、このマンションの人たちって、管理のことにまるで無関心。意識が低いっていうのかしら。花壇の端に誰か車をぶつけて崩してしまったらしいんだけど、その修理の話だって、まとまるのに3か月もかかったのよ」

夫     「人の数の問題なのかなぁ?」

妻     「そうとは言い切れないけど、ここは割と値段が安かったでしょ。だから結構いろんな人が入っちゃったらしいのね。境遇とか職業とか種々雑多な感じだって、管理人さんが言ってたわ。だから、今度は絶対、こじんまりしたマンションに入りたいわ」

 

(9年後)

 

妻     「今度、お隣さんのKさんと、すぐ下のQさんが転居するんですって。寂しいわぁ」

夫     「お隣さんとは仲良くしていたんだろう。転勤とか?」

妻     「そうなの。下のQさんとも管理組合の理事会で知り合って、時々遊びに来てらしたんだけど。お子さんの家に同居するとかで……」

夫     「そうか。それは残念だね」

妻     「ここに来て、仲良しになったのは2人だけだけど、他の皆さんも感じの良い人ばかりだから、また、その内にお友だちができるかもしれないわ。あなたも、たまには集会とかに参加してみたらどう?」

夫 「外壁のクリーニングの話はどうなったの?」

妻 「来年やるって。今、どの業者に決めるか検討中ってとこ」

夫 「早いね。ここの皆さんは意識が高いのかな」

妻 「そうね。いつも綺麗にしておきたいって言う人が多いのね。“自分の家意識”が強いみたい。皆さん、管理人さんと遭遇したら、つかまえては何か文句言っている感じね。」

夫 「前のマンションと違って、ここは雰囲気がいいな。綺麗だしな」

妻 「アットホームな感じ。かといって、プライバシーを詮索する人は誰もいないし。うちに遊びに来てくれたQさんやKさんだって、差し障りのない話だけだったもの」

 

付加価値豊富な大規模マンションは高値を維持してくれる?

共用施設など要らないと言っている人でも、「買ったマンションの価値が下がるのはいやだ」とおっしゃるようです。

 

高値で売れるマンションと、安くなってしまうマンションの差の要因はいくつか挙げられますが、ここでは建物の付加価値の有無・大小について述べたいと思います。

 

付加価値のひとつは「共用施設の充実」です。具体例は既に述べたので繰り返しは避けますが、共用施設の豊富なマンションは大規模で価格も高いものです。

 

共用施設が豊富なマンションを前にしたとき、高値にたじろぎ、予算に無理がある人は専有面積を縮めたり、低層階の住戸を選択したりと、何らかの妥協を強いられるかもしれません。

 

しかし、付加価値の豊富なマンションなら、多少の妥協をしてでも買って損はないのです。無論、多少の妥協といっても、限度はあります。

特に低層階は「眺望価値とプライバシー性」の低い住戸だったりするので、せっかく良いマンションを選んだつもりでも足を引っ張られることがあります。その点には注意しなければなりません。

 

結局「大きいことは良いこと」なのだ

今日のまとめです。やはり、共用施設がたっぷり用意されているマンションを選ぶ方がよいのです。自分には関係ないとか、興味ないと考えず、将来の売却に思いをいたしてみましょう。

 

「多くの買い手が期待する・見学者が感動するマンション」、高値かもしれないが付加価値たっぷりのマンションを選んでおいた方が、自分の判断は間違いなかったと後年、きっと満足するはずです。

 

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。次は10日後の予定です。

 

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