第254回 「格好の良いマンションは価値あるマンション」

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

10年か15年で売却する可能性が高いので、そのとき損をしないかが心配。儲からなくてもいいが、どのくらいになるかを知りたい・・・このようなメールが毎日届きます。

 

お答えは決まっています。

「将来価値を決定する要素は、①立地条件(利便性と環境)、②スケール(存在感)、③外観・玄関・空間デザイン、④建物プラン(共用施設、間取り、内装や設備など)、ブランド、⑥管理体制です。

この中で一番比重が高いのは①の立地条件なのです。立地さえ良ければ建物は何でもいいという単純なものではないのですが、大きな要素であることは確かです。逆に、どんなに素晴らしい建物でも立地条件の悪さを補うことはできません」

 

このようにお答えします。そして、具体のマンションを上記に照らし合わせて、例えば「駅から徒歩15分は大きな弱点と言わざるを得ませんとか、「駅から徒歩8分は近いとは言えませんが、妥協範囲です」など。

 

近いケースでは次のように言うときがあります。

「立地条件は申し分ないですね。なぜなら、駅に徒歩3分と近いだけでなく〇〇公園に面するからです。この付近は徒歩5分以内の物件が当たり前のように多いので、3分でもインパクトはありませんが、〇〇公園に面する物件は類例が殆どないので、大きなアドバンテージになるでしょう。駅に近く環境が良いという両立する物件は希少価値が非常に高いのですから」

 

しかし、後者の例は殆どないので、問題は「駅近が当たり前のエリア」の駅近マンションの場合です。

 

駅に5分以内が当たり前のようなエリアの場合、差別化は建物で競うことになります。同じような立地なら、②スケール(存在感)、③外観・玄関・空間デザイン、④建物プラン(共用施設、間取り、内装や設備など)、ブランド、⑥管理体制がどうかの検討が必須です

 

この中で特に大事な点はスケールやデザインなどですが、それを一言で表すと「格好のよさ」です。

 

エントランスは車寄せのあるキャノピー(天蓋)が来訪者を迎える、天井は2層吹き抜けで高く、床は天然石、壁は〇〇材の天然木、有名な彫刻家によるモニュメントや大きな絵画がアクセントになっているなどの豪華なエントランス、上を見上げると、どこかの王宮のような天井飾りとシャンデリアが輝いています。

 

このようなマンションを見たとき、多くの見学者は「格好いい」と思うでしょう。その前に、マンション全体のフォルム(外観)を目にしたときの感想が「高級ホテルのようだ」「クラシックで荘厳な感じがする」「まるで美術館みたい」とか「モダンでシャープな感じがする」「いかにも高級マンションという感じがする」「風格がある・洗練されている」「近寄りがたい感じ」など、表現は無数にありますが、要は「他のマンションとは違うなあ。格好いいな」と思うことかもしれません。

 

こう書くと、大規模マンションでは可能でも小型マンションでは該当するものがないのではないか。そんな心配をなさる人もあるので、補足しておきましょう。

 

価値ある小規模マンションの共通点

小型で格好のいい物件にはお気づきの読者もあると思いますが、以下のような共通点があります。

〇渋谷区・港区・千代田区などの邸宅地に集中している

〇低層マンションが多い

〇名庭園が借景として近傍に存在する

〇小規模といえども専有面積は100㎡以上が最低だったりする

〇小規模といえども敷地が広く、充実した共用施設を備えたものもある

〇小規模といえども管理人が朝から夕方まで駐在している

〇プライバシーに配慮した内廊下設計になったものが多い

 

このような物件は、いかにも高級というオーラを発散しています。価格も高いのですが、中古なら手が届くものもあります。管理が良いので、年数を感じさせないものが普通であり、見学したときの興奮(感動)は新築に負けないのです。

 

「素敵」を連発する人も多いでしょう。

 

低層住宅街なら小規模マンションでも大きな存在感がある

さて、大規模マンションは言うまでもなく大きくて堂々としています。エントランスも2階までの吹き抜けになっていたりしますし、要するに門構えに風格があるわけです。フェンスと門扉で囲った形の物件も少なくありません。

 

それに対し、小型マンションは対極にあるタイプで、威風堂々からは遠いと言えます。しかし、実際にその場所に行ってみると結構立派に見えるのです。大小は相対的なもので、立派に見えるのは周囲の家が邸宅ではあっても2階建であるし、敷地はせいぜい100坪か200坪なので、小型でもマンションは大きな存在感を見せるのです。

 

第一種低層専用地域では3階か4階建てしか建てられませんが、マンションは一戸建てに比べると堂々たる姿になっているものです。

 

また、小規模であっても賃貸マンションのような形状ではなく、外観のデザインやエントランス周りの雰囲気は全く違って見えます。高級感、上質感、格調の高さ、個性的でありながら上品、語る言葉が足りません。そこはかとなく漂う気品とでも言えば良いでしょうか?

 

それらは用いる建築材料から違っています。建築家でない筆者には説明できませんが、材料の違いと複数の材料の組み合わせなどが高いデザイン性をもたらす面もありそうです。それらは、何年経っても色あせない、陳腐化しない、飽きがこないものになっていると言えます。美術館、博物館のよう外形のマンションもひとつです。

 

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商品には、実用性が優先される物と実用性・デザイン性の両方が期待される物があると考えられます。満足度が高いのは後者です。マンションも大昔は、実用的であればよかったかもしれませんが、早い段階からデザイン性も追求されるようになって来ました。

 

しかし、良いデザインは建築コストや販売価格に影響するものです。安上がりでデザイン性も高いマンションがないとは言いませんが、見る人が見れば豪華さには遠いのです。

 

マンションは建て替えも困難、エントランスや外観に変更を加えることも簡単ではないのですから、新築の段階から格好よく作ったものがリセールの際に有利になるのです。

 

コストばかり気にした、金をかけていないマンション、すなわち格好良くないマンションはリセールでも高くはならない。そう思うべきなのです。

 

もちろん「格好いい」のレベルを数字で表すことは難しく、人によっては安物マンションでも格好いいと感じるかもしれませんし、格好よく設計したつもりでも何十年か経つと陳腐化するということがあるかもしれません。これは、別の議論になるので、ここでは追求しませんが、できるだけ多くの人々が「格好いい」と思うであろう。そんなマンションを選ぶことが大事です。

 

設備や間取りは、どちらかと言えば後順位です。マンションは「街を選ぶ→次にマンション全体を選ぶ→最後に住戸を選ぶ」という順番が重要です。住戸の中身だけにこだわっては失敗します。

 

街選びはともかく、マンション全体に目を向けることを忘れないようにしたいものです。

 

新築なら完成予想図を見るしかない-判断は難しい

格好いいマンションかどうかは、新築の場合、工事中であることが多く確認ができません。売り手は、「どうです。恰好いいでしょ」とアピールしたいので、完成予想図(パース)を何点か用意します。

 

全体(外観)パース、玄関周りのパース、内廊下の部分パース、パーティルームやゲストルーム、オーナーズラウンジがあるマンションなら、それらの部分パースです。

 

パースは、設計図面を読み取りながら専門家が描くのですが、描くに当たってはどの方向から描くのが良いか(アピール度が高いか・見映えがよいか)の検討をします。そして、線だけの絵を何点か作製し、売り手に選んでもらいます。

 

出来上がった図は、大抵デフォルメ(誇張)してあります。遠近法で描けば、短い距離も長く見せることができますし、背景の関係をうまく使えば、小さなものを大きく見せることもできるのです。

 

予想図が与える印象が買い手の頭に残りますが、実際の建物を完成後に見ると違和感を覚えるはずです。絵は恰好いいが、実物はもうひとつだったというわけです。テレビでしか見ていないタレントさんを外で見ると、実際は思いのほか小柄であったり細い人であったりするのと同じです。

 

しかし、そんなことで売主がクレームを受けるということはありません。デフォルメは違反ではないからです。

 

違和感を覚える人も、実は少ないのかもしれません。完成して初めての見学では、新居の完成に喜びが一杯で、購入住戸に早く行きたい気持ちが先に立ってしまうためと考えられます。

 

格好いいと思ったマンション、実は案外「普通」だったとか、期待していた高級感がなかったなどと落胆することにならないよう、冷静な目で絵を眺めるようにしたいものです。

 

恰好いいマンションの見学をして目を肥やす

とはいえ、図面を見たり内装・外装の素材のサンプルを見たりして、頭の中で出来上がりマンションを完成させることは難しいものです。そこで、お勧めの方法を提案します。完成マンションを多数見て目を肥やす方法です。

 

(1)高級住宅街のマンションを外から見る

(2)予算オーバーのマンションを見学させてもらう

格好いいマンションは予算を超えるものかもしれません。超高級マンションは敷居が高いかもしれませんが、何しろ高級マンションを一度見学してみましょう。

狙いは、エントランスホールやラウンジなどの雰囲気、コンシェルジュのいる風景、床や壁の素材、モニュメントの存在、天井の高さ、エレベーター内部のグレード感などを見ることです。

 

(3)高額な新築マンションの完成物件も

近頃は販売スピードが鈍っているので、高品質の優良マンションでも建物竣工時に売れ残っている物件が少なくありません。それらを見学するのも方法です。こちらの方が、見学に行きやすいかもしれません。

 

(4)種類の違うマンションを見る

高級マンションばかり見ても基準値が曖昧になるので、中級マンションと思われる物件も見なければなりませんが、おそらくは検討の途上で自然と見ることになるでしょうから、さほど意識しなくても良いのかもしれません。

 

(5)写真を撮ってアルバムにしてみましょう

見たマンションを脳裏に記憶するだけでなく、写真に収めましょう。それを「普通のマンション」「高級マンション」といったカテゴリー別に並べてアルバムを作り、差異を比較してみるといいかもしれません。

 

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以上の方法は、中古マンションを検討する人にも有効と考えます。長年に渡って多数のマンションを、しかも種類も様々なマンションを見て来た業界人や建築家などに短時間で効率よく近づきたい人には、こうした学習が必須です。

 

そのマンション、門構えはどうですか?

マンションの価値を決める要素はいくつかありますが、何と言っても比重が高いのは「立地条件」です。他の要素がどんなに素晴らしいとしても、立地条件の良さにはかなわないのです。

とはいえ、立地条件がよければ建物は何でもいいというほど単純ではありません。建物価値も大事であることは言うまでもありません。

 

その建物価値は、①スケール(存在感)、②外観・玄関・空間デザイン、③建物プラン(共用施設、間取り、内装や設備など)で評価されます。このうち、分かりにくいのは②のデザインです。

 

間取りなら、風呂が1620サイズで広いとか、窓の高さが2.2m、横幅が5mあって大きいとか、反対にリビングダイニングは狭くて家具配置が難しい、また南に面している、角部屋であるといったふうに分かりやすいですが、デザインには「格好がいい」「洗練されている」「上質な印象」「堂々としている」、「貧相だ」「シンプル」「軽快な感じ」「重厚」「安っぽい」等々、表現は抽象的で情緒的です。

 

それだけに、買い手も軽視しがちです。軽視はしていないのかもしれませんが、新築マンションの場合は、実物がないためにアピール度が小さく、ついスルーしてしまうのかもしれません。

 

マンションのデザインのうち「門構え」について以下で補足します。

 

ゲート付きのマンション

門構えと聞いて何をイメージするでしょうか?そうです。門そのものです。マンションでも門があるからです。門とは今風に言えばゲートのことです。マンションもゲート付きは少なくありません。

 

以下に具体のマンションを紹介しましょう。

 

◆グランドメゾン白金の杜ザ・タワー(東京都港区)

 

◆広尾ガーデンヒルズ・フォレスト(東京都渋谷区)

 

◆ブランズ四番町(東京千代田区)

 

◆パークコート赤坂 ザ・タワー(東京都港区)

 

◆ザ・ハウス南麻布(東京都港区)

 

これらのマンションは、どれも高級マンションと言われるものです。規模も大型です。敷地にゆとりがあって、敷地入口から建物壁面までは距離があります。

 

エントランスデザイン

マンションは、敷地が広くても駐車場の存在が邪魔をしたり、隣地に長時間に渡り影を落としてはいけない「日影規制」や隣地斜線制限などがあって、建物位置が決まって来るものです。 このため、道路境界に近い位置に建物が寄ってしまうことも多いのです。

 

また、商業地域では、敷地が狭く、敷地一杯に建物が建ってしまうことが多いものです。敷地が広い場合も、その空地部分は「公開空地」と言ってマンション住人以外の人を通行させなければなりません。

 

こうした理由から、敷地全体をフェンスで囲いゲートを設けるなどということは難しいものです。そこで、ゲートは諦めて「門構え」ならぬ「家の構え」にデザイン力を発揮しようとします。家の構えとは「玄関」のことです。

 

小規模でもエントランスのデザインに工夫をしたマンションは結構あるものです。日ごろ関心を持つ筆者は、物件の評価するときゲートやエントランスのデザインのチェックは絶対に外しません。

 

提供する「マンション評価レポート」の中では、20項目の内の1項目に過ぎない「デザイン」ですが、リセールのときに買い手に与える影響度は小さくないのです。なぜなら、感動を与えてくれる(与え得る)要素が多いか少ないかで購買意欲が変化するからです。

 

つまり、「すごい・素敵」を連発させられるかがリセール成否のカギを握るのです。感動要素は、「奇麗」や「便利」、「格好いい」、「お洒落」などですが、マンションを買いに来てくれた人が最初に目にするのが外観であり、ゲート、エントランスなのです。

最初に衝撃を与えることができれば、売却は半分成功です。

 

マンション選びで必要な知識、チェックポイントはいくつもありますが、「門構えはどうか」という視点を是非とも忘れないで欲しいと思います。

 

リセールの成否は、他人がどう思うかにあります。自分は「素敵」と思って買ったのに、売るときに見学者の大半が「陳腐だな」とか「不格好」の印象では購買力が高まりません。

 

高いデザイン性を誇るマンションかどうかを見る目を養うには、日ごろから多数のマンションを見て比較する意識が必要です。外から見るだけですから、見学の予約も要りません。新築のモデルルームを見るより、外観を見て歩くことをお勧めします。

 

 

・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。次は10日後の予定です。

 

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