第245回 改めて考える「マンションと一戸建て」

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

毎月4万円もの固定経費が必要な老後のマンション住まいに疑問の声があると聞きました。

 

マンションの管理費、東京では平均して15,000円余かかります。広さや管理体制によって変わるのは言うまでもないですが、80㎡で25,000円といった例は少なくありません。

修繕積立金は、当初は10,000円未満が多いですが、20年もしないうちに管理費と同じくらい、もしくは逆転してしまう計画が多いようです。現時点で築30年を過ぎたマンションでは35,000円、40,000円といった例も珍しくありません。

 

ということは、築後20年以上のマンションを最近購入した人、もしくは購入時が築10年のマンションでも10年住み続けた先には、毎月30,000~40,000円が黙ってかかるランニングコストということになります。

 

一戸建てに住んだら、こんなにかからないのは明らかです。修繕費は一戸建てでもかかるのですが、マンションの場合、仮に月30,000円として年間36万円、20年で720万円を積み立てたてたとしても、共用部分の修繕にしか使えません。別途、室内の改修・更新費用が必要になるのです。

 

こうしたことを考え併せると、老後のマンション暮らしは損ではないか? そんな疑問の声をときどき聞きます。今日は、この問題について述べることにします。

 

●マンションの固定経費は高くなる傾向に?

筆者の日常業務「マンション評価」作業を通じて思うことのひとつは、新築マンションの修繕積立金が近年は随分高くなったということです。

 

竣工時から当初5年の初期設定を抑え気味にして、6年目から増額し、さらに11年目あたりで再度増額するのが一般的ですが、最近は初期設定から高くし、その後の上げ幅を抑えるケースが増えているように思います。

 

修繕積立金の増額は、分譲時を除くと管理組合総会で議決されるものなので、計画通りに増額できない例もあると聞きます。筆者の想像に過ぎませんが、上げ幅が大きいと反対決議されて計画通りの積み立てができないマンションもあるのでしょう。

 

筆者の評価対象は中古マンションも多いですが、修繕積立金がひどく少ない例に遭遇することがあります。主に、築30年を過ぎている古い物件ですが、積立金の残高までは調査していないので確証はありませんが、レポート提出後に依頼者(購入検討者)が自ら調べてお知らせくださるときもあって、やはり少ないことを実感させられます。

 

中には、急激な増額を決めたばかりという事例にも遭遇するのですが、そんなマンションは、資産価値の維持に管理組合(所有者)が並々ならない理解を持っているのだろうと感じたりもします。

 

マンションは古くなっても簡単に建て替えることはできませんから、長く社会的なストックとして維持保存をすることが求められます。言い換えると、マンションは私有財産であっても共同所有の建物なのですから、共同で維持管理に務めなければならないのです。

 

それがひいては財産価値の維持または向上につながって行きます。

 

●マンションと一戸建ての差で最も大きな違いは立地

実は訳あって筆者の家は一戸建てです。10年前までは都区内のマンション住まいでしたが、親との同居の必要性から親の家を建て替えて2世帯住宅にして暮らしています。

 

自分で概略のプランを描き、注文で建てたので、広さや設備などに文句はありません。

唯一の欠点は、都心からとても遠いことです。そんなわけで、筆者の日頃の拠点は東京都心に近い街に置いています。

 

近年、マンション用地の不足もあって、戸建て部門を新設したマンションデベロッパーもあります。歴史ある大手のマンション業者でも建売住宅を展開している例は何社も見られます。

 

マンションほどの大きな売り上げにはならないものの、一戸建てのニーズは今もあると判断しての進出です。とはいえ、マンションほどの戸数が分譲されているわけではありません。

 

しかも、最寄りの駅から徒歩10分以内の立地で分譲されているものは稀有です。都区内は無論、人気の沿線で、かつ東京都を離れても決して多くはありません。筆者にもときどき一戸建てのご相談はありますが、例外なく厳しい評価、特に将来価値については依頼者を落胆・失望させてしまう辛いレポートになってしまいます。

 

狭い敷地の建売住宅とマンションを比べると、マンションの方が住戸面積は劣っていても外観やエントランス、共有の敷地規模、供用の庭園などが立派であること、かつ階数によっては眺望が良いことなど、数えきれないほどの長所・利点があります。

 

何より、交通の便は圧倒的です。維持管理にかかる費用があっても、売却時に取り戻せると思えば大きな問題ではないのです。何より上記のメリットが管理費等の費用負担を補って余りあるからこそ、マンション購入者を増やして来たのです。

 

●じわりと郊外居住者が増える可能性も

コロナ騒ぎは、毎日の通勤形態から自宅での勤務や郊外のサテライトオフィスなどでの執務へと変化をもたらしているという報道があります。

 

これは、都心通勤の必要度が薄れていることを意味します。現在、郊外に住んでいて遠距離通勤を日常にしている人でも、そのまま郊外都市にマイホームを構える道を選択する可能性につながります。都心・準都心で暮らす人達も価格の安い郊外でマイホームを取得する方向に志向が変化するのかもしれません。

 

もともと郊外都市で暮らす人たちでも、都心の職場に遠距離通勤することを嫌って、職場に近い都心もしくは準都心でマンションを買うという選択をして来ました。

 

共働きで共に都心に職場があるという夫婦も増えているので、子育てのためには、否応なくマイホームの立地は都心の職場に近い都心か準都心を選ぼうとしています。

 

コロナ問題は、都心のオフィスに集まって業務をこなすという勤務形態を根底から崩すかもしれません。在宅で仕事をこなすことが普通という時代がすぐそこまで来ているようにも見えます。

 

直接顔を会わせなくてもリモートの方法で推進することができる職種、業種も少なくないようです。コロナの影響は、それを証明した格好になっているとも言えます。しかしながら、多くの企業、多くの職種で都心のオフィスへ通勤することが変わらず求められているのです。

 

古い社会に長く生きて来た筆者のような人間にとって、「在宅勤務」は遠い世界のことに思えてなりません。百歩譲って世の中の趨勢が、都心のオフィスに集まることを必要としない形になって行くと考えても、人間には元々「集まって暮らす」ことを望む動物的な本能があるはずです。

 

また、時代は変わってもオフィスに行かなければならない職種も少なくないのです。取引先との関係でも、電話やメール、テレビ会議で済ませられるとは思えません。オフィスが郊外で成り立つ業種・企業が増えるとも思えないのです。

 

じわりと郊外オフィス、郊外勤務者が増えるかもしれません。であれば、マイホームも都心志向から郊外へシフトする可能性が高まるかもしれません。

そうなれば、都心の高額なマンションを、しかも窮屈なマイホームを選択しなくてもよいということにもなるでしょう。

 

郊外なら低予算で検討することもできることでしょうし、大きな住まいを手にすることも夢ではないでしょう。そんな行動を選ぶ階層が見えて来たというのではありません。あくまで可能性について言及したに過ぎません。

 

筆者は、そうなることに否定的です。そうはなるまいと断言したいほどです。

 

理由はこうです。

そもそも都心住まいの人が、郊外へ移住を希望しているとは思えないのです。狭いながら都心・準都心の暮らしを満喫してしまうと、郊外移住は考えにくいはずです。しかも、夫婦共稼ぎで資金力もあって、今の低金利なら郊外に行かなくても手が届いてしまいます。

 

無論、都心・準都心のマンションの場合、郊外マンションよりは狭い部屋になってしまうかもしれませんが、高値で売却が可能な都心・準都心マンションなら、いずれ買い替えればいいという発想も生まれて、広さは妥協できる要素なのです。

 

その昔、マンションの購入先が郊外に向かったときがありましたが、現在は職住近接に戻り、都心・準都心マンションが主流です。しかも、その当時と大きく異なっているのが、共働き世帯が増えたことです。高齢化が進む中、少子化傾向も並行して続いています。

 

このため、女性は結婚後も働き続ける傾向が強まっています。また、夫婦の職場は同じではありません。ともに郊外でヨシとする夫婦は少ないのです。

 

近年(過去10年くらい)、郊外マンションが売れない傾向が強くなっていました。大手も都心・準都心を供給の中心としています。郊外マンションは売れないからです。郊外マンションの購入検討者は、その周辺に住む子育て世帯が主流で、夫だけが都区内勤務で妻は専業主婦のため、世帯所得が低い世帯です。予算は当然少なく、郊外マンションの価格とマッチします。

しかし、郊外でヨシとする需要は絶対数が少ないのでしょう。郊外マンションは近年、非常に売りづらいのです。

 

筆者の業務である「マンション評価」でも、ときどき郊外物件の依頼が入りますが、都心・準都心マンションのご依頼に比べると数が少なく、新築マンションの供給戸数比に連動しているかのようです。

 

埼玉県や千葉県に住み、埼玉県・千葉県内のマンションを望む人なら、県内のマンションを買ってくれそうなものですが、東京都に比べて安いにも関わらず売れ行きはあまり芳しくないのはなぜでしょうか?その要因のひとつは、一戸建てが安く買えるからです。

 

結局、埼玉・千葉に住み都心に通っている人が、通勤に便利な駅前立地のマンションを買う傾向は強いものの、マンション需要の絶対数が少ないのは間違いありません。

 

昔は、都内居住者も都内購入を断念して(価格もローン金利も高過ぎて手が届かなかったのです)郊外移住を余儀なくされましたが、バブル崩壊後は地価が下って都心にUターンの形となりました。

 

再びマンション価格が上昇した昨今ですが、それでも安値の郊外マンションへ向かう傾向はなく、郊外のマンションの売れ行きは低迷したままなのです。

その要因は、共働き家庭が増え、都心居住を脱することができないためと考えても飛躍していないはずです。

 

●郊外の一戸建てにシフトしないか?

今後は郊外居住でも問題ないと考えるニーズが増えると仮定した場合、都心居住が可能な高所得世帯なら、一戸建ても夢ではないはずです。

 

大手マンション業者の中にも、近年、建売住宅に力を入れている企業があります。その供給物件を見ると、駅からもさほど遠くなく、敷地規模においても住宅のグレードにおいてもまずまずの物件が散見されます。

 

しかし、高所得のサラリーマン家庭といえども、共働きで、夫婦とも問題ない立地条件かどうかとなると、夫は良くても妻が不都合、またはその逆ということもあるようで、郊外の一戸建て需要はデベロッパーが期待するほどの大きさには増えていないようです。

 

やはり、東京はマンションが主流の住宅形態であり、デベロッパ-もその前提で今後も開発を進めるはずです。「東京の住宅の主流はマンション、その流れは今後も変わるまい」、筆者はそう信じます。

 

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

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