第224回 「買いたいものがないと嘆く買い手さんへ」

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

 

「新築も中古もなかなか良いものがない」――このような嘆き節を最近よく聞くようになりました。

新築は建設用地がないので供給数が減っていることに原因があります。未発売の新築マンションは多数ありますが、売れないので発売に踏み切れないのです。着工も取り止めて様子を見ている物件もあると聞きます。

着工済みマンションは既に売り出していますが、売れ行きが悪いので、例えば半分だけ売り出して様子を見ているというわけです。売出した住戸に完売の目途が立てば、残りを売り出すのは間違いないものの、販売が進まず、僅かの戸数しか売り出せない状態が長く続いています。

いっぺんに売りださず「チビチビ」販売するのは、売り出して残ったときのイメージダウンを恐れるためです。基本的にマンション業者は「先着順受付中」と「在庫多数」を嫌うのです。「おかげさまで第1期・2期・3期連続完売。いよいよ第4期受付始まる」などと前景気を高めながら「好調」と思わせたいのが売り手の心情です。

 

売れ残りを嫌うというわけです。100戸売り出して30戸しか売れず、70戸売れ残りになる形より、30戸だけ売り出して30戸を完売させ、「おかげさまで好評完売」と言える形をマンション業者は好みます。

 

第1期の販売が終わっていれば、第2期を待っても価格が下がるわけではないので、第1期で既に検討した買い手から見れば結論が出ているわけです。「高い」とか「狭い」、「魅力のないマンションだ」など結論付けてしまうと、たとえ第2期・新発売と謳おうとも、その物件は検討対象外になります。

売り手は「新発売」と謳いつつ、新たな買い手候補をモデルルームに呼び込む必要に迫られるというわけです。

 

しかし、売れないマンションの多くは何かしら短所・欠点があるのですから、何度「第●期 新発売」などとアピールしてみても急に売れ行きが良くなるわけではありません。

販売促進のためには、物件に新たな魅力を付加して宣伝活動を実施することが必須となります。新たな魅力とは何でしょうか?場所も変えられませんし、今さら間取りを広くするようなことも不可能です。最も効果的なものは価格です。

しかし、価格を下げるのは至難の業です。元々マンション分譲の利益は大きくないからです。何より、先に高く買った(売買契約締結済みの)顧客とのトラブルを避けなければなりません。ゆえに、値下げはできないのです。

 

その昔、値引き販売を断行するに当たり、既契約者に値引き率に応じた差額を返金してトラブルを予防しておいてから販売に踏み切った例もありましたが、最近は全く見なくなりました。

買手から見て期待できるのは、「多言無用」が前提となるものの、値引き要求を呑んで販売してくれることですが、現実的ではありません。少なくとも、建物竣工時期が半年以上も先の物件ではありえないのです。。

 

●新築マンションの価格は今後どうなる?

新築マンションはどれも今は高過ぎると思うほかありませんし、新たなマンションの売出しも期待はできないのです。何故なら、新規売出しマンションの原価が下がり、売り値もそれに応じて安くなって来る可能性は当分ないからです。

 

別の言い方をさせてもらうと、二大原価の「土地と建物」の価格が急落することはないからです。なぜなら、土地は2年も前に高値で仕入れていますし、建築費が下りだしたという情報もないからです。建築費が決まっていない、つまり原価が決まっていないケースでも、現状では発注金額(建築費)が下がる可能性は低いので、新築マンションの価格が急落することはありません。

工事費が下がるためには、大地震や大型台風などによる被災地の復旧・復興工事がなくなるか、東京オリンピック関連工事がなくなること、東京都心の再開発工事が止まることなど、建設業界の繁忙が落ち着くこと、建築資材費が値下がりすることなどが条件になるのです。

ときどき、建築資材(鋼材など)がいくらか値下がりしているという報道に触れることもありますが、建築費の45%は労務費(人件費)と言われるだけに、建築費が大きく下がる材料とはなりにくいのです。

労務費の上昇が一服したという声もありますが、人手不足は解消されていないため、建築費が値下がりに転じることにはならないようです。

結局、最後はマンション分譲会社(デベロッパー)が赤字覚悟で価格を下げるしかないのです。しかし、売り出し前から赤字事業を進める企業はありません。

 

熊本地震等の復興需要は残っていますし、直近の台風被害の復旧工事、国土強靭化政策によるインフラへの公共投資などが急増しているうえ、東京オリンピック関連需要が本格化しています。

オリンピック関連では、国立競技場の建て替えや各種競技の会場建設、老朽化している高速道路の改修をはじめとする道路工事などが、合わせて兆円単位で発生すると言われます。

建設需要はオリンピック開催の直前まで続くことでしょう。しかし、2年後には東日本震災、熊本地震の復興関連、今年の台風被害の復旧工事などもなくなるのでしょう。少なくとも、大部分は終盤に差し掛かっているはずです。建設業界には一服感が出ていると予想されます。2年先には建築費も低下傾向に転じるかもしれません。

 

とはいえ、品川駅のリニア新幹線関連工事や山手線「高輪ゲートウエイ駅」の開設と関連工事、浜松町駅周辺再開発、東京駅北口・常盤橋再開発、虎ノ門~麻布台開発、「虎ノ門ヒルズ駅」の開設、首都高日本橋地下化工事、渋谷駅周辺再開発工事など、都心の再開発が目白押しに予定されています。五輪後も訪日客の増加が見込まれるのでホテル建設需要も続くに違いありません。

加えて、過去6年 財政バランス維持のために6兆円に抑制してきた規律を破り、2019年度から3年間にわたり、公共工事費を毎年1兆円増やして7兆円に増やすと政府は発表しました。

 

これらを俯瞰して行くと、建築費の大幅な低下はないと見なければなりません。

では、マンションの2大原価のもうひとつ「用地費」はどうでしょうか?次で考えてみます。

 

●土地代はどう動くか?

マンション用地の売り物は、数だけなら山のようにあると言われます。しかし、今のマンション業者の期待する売地は少ないようです。たまに好立地の土地が売りに出ると、取得競争は激しく、入札では高値の札を入れるほかないのが実態と言われます。

 

無競争の土地は、価格は安くても「立地条件が悪い」ので販売に苦労します。マンションの二大原価のひとつ用地費が安くても、もう一つの原価である建築費はどこで建てても大差ないかため、劇的に安いマンションを商品化することはできないのです。大規模マンションなら建築費も割安になる可能性は高いですが、そのような大規模用地自体が少ないのです。

 

仕方なく小規模の用地を拾っていくしかなくなりますが、建物規模が小さいほど建築費も割高になるので、結局のところ多少安値の土地を獲得しても、マンション価格は大して安くならないのです。

 

高くても買い手がつくのは、駅前マンション、都心マンションに限られてしまいます。都心マンションの買い手は高額所得者なので、多少時間がかかっても何とか売れて行くようです。サラリーマン層も、最近はダブルインカムなので高額マンションに手が届くのです。

 

たとえ安くても郊外マンションに目を向けない買い手が増えています。マンション業者も都心・準都心志向です。当然、用地取得合戦は激しく、仕入れ価格は上方に向かいます。

 

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用地難は、ますます土地価格の上振れ傾向を強めます。都心の土地はマンション業者だけが求めているわけではありません。オリンピックを前に、またその後も増えると予想されているホテル建設。その用地を物色している企業も少なくないと聞きます。ホテルは利便性が大事なので、マンション用地と競合します。

 

まだまだ書き足りないのですが、土地代の話題はここまでとします。

 

●中古マンションの勧め

問題は中古マンションです。数だけならたくさん市場に出回っているのです。その意味では、中古は選びやすいと言えます。ところが、中古マンションは選びにくいとも言われます。簡単に言えば、ひとつのマンションに100戸ある新築と1戸しかない中古、比較的長い検討時間を持てる新築と、早い者勝ちの中古といった違いが買手から見たときの大きなハードルになっています。

 

居住者のいる中古マンションには、見学の難しさもあります。いわば見ず知らずの他人の家を覗きに行くわけですから、心理的な抵抗も小さくないのです。

 

しかし、こうした壁をうまく切り抜けることができれば中古マンションの方が結論は出しやすいのです。

 

価格は新築価格の高騰に連れて中古も高騰しています。

価格が上がれば中古も売れ行きが悪くなります。高くても買い手が現れる超人気のマンションの場合は、買い手も多いので下がりづらいとは言えますが、人気もほどほどの物件なら高値を嫌って買い手は減りますし、売れ足も鈍くなります。

 

持ち主は殆どが個人で、ある時期までには売りたいといった事情があるので、反応が鈍ければ価格を下げます。そうした傾向に敏感な仲介業者も売り希望者に適切な助言をするでしょう。高過ぎる中古はやがて上げ止まって下方修正されます。その動きは新築と違って早いのが特徴です。

 

新築は先に説明したとおり、原価が決まっていますし、元々大きな利益率があるわけでもないので下げ余地が小さいのです。これに対して中古マンションの場合は、購入価格を大きく上回っているうえに、ローンの残高も大幅に減っているので、下げ余地は大きいのです。

 

所有者が売りたい事情がある限り、極端な言い方をお許しいただければ、決断に時間はかかりません。

 

新築マンションの価格は硬直的ですが、中古マンションの価格は柔軟なのです。高く売りたいのは持ち主の普通の心理ですが、「売れないなら仕方ないよね、下げましょう」と素早く結論を出します。

 

●得策は中古の選択かも

中古探しは簡単でないと感じている人も多いようです。しかし、今は中古視野に入れないとマイホームは持てないと筆者は助言しています。

 

新築の方が何かと気持ちがいいですし、売主業者の信用力や法的な建物保証などもあって安心感も大きいのは確かです。しかし、ないものねだりをしていても仕方ありません。手っ取り早いのは中古マンションです。少しコツを覚えれば、チェックポイントや調べ方なども分かります。無論、筆者はそのサポートをします。

 

最初はコツがわからず手間取ることでしょうが、実際にやってみると難しいところは新築よりはるかに少ないのです。筆者にご相談くださった方の90%以上は3か月以内に購入物件を決めて目的を達成しています。

 

新築は諦めた方がいいかもしれません。稀に優良で価格も想像していたより高くない新築マンションがないわけではありませんが、90%以上は買い手の期待を裏切ってしまう実態にあります。

新築マンションを買えた人は貸金的な余裕のある人か、幸運な人と思うべきかもしれません。

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

 

新・マンション購入を考える

こちらのブログも是非ご購読下さい。690本以上の記事があります。

ちなみに、10月20日は「第696回 「マンションの1階住戸の購入は避けたい」

です。

 

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筆者には「選手村マンションは買いか」という本を上梓したこともあって、新聞社やネット配信ニュース社、雑誌社などから取材の要請も多数来ましたが、「本の宣伝になるなら」と可能な限り応じて来ました。

書籍には書けないこともあるので、拙著を読んで「物足りない」と感じた方には、個別のご相談で対応した方が良いのかもしれないと思い直したりもしています。

現況は陸の孤島のような晴海フラッグ、5000戸以上、12,000人の街になるのに、1時間当たり2000人の輸送能力しかないBRT(バス高速輸送システム)に頼るマンションの人気はどこから来ているのか、将来の予想価格はいったいどのくらいになるのか、過去の売買履歴がゼロの街の未来の予測値はどの程度に見ればいいのか。

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