第135回 老朽化マンションの末路と定期借地権

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ときどき定期借地権のマンションの新規売り出しに気付きます。

ご存知の読者も多いことと思いますが、定期借地権は、借地契約の期限が来たら建物を解体し、更地にして地主に返還するという条件が付きます。

 

マンションは、定期的な補修、改良を加えながら長く住むという目標を立てるのが普通です。そのために、大規模な修繕も必要になるので新築当初から費用を積み立てて行きます。

 

定期借地権マンションも契約期間が50年以上と法律が定めているので、短くとも50年は住み続けることができます。適宜改修を行いながら住むことになるはずですが、「どうせ解体するのだし、多額の改修費をかけても意味がない」と考える時期がやがて来るのではないか。そして、メンテナンスがなおざりになり、最後は「なるがまま」に放置されるのかもしれません。

 

一般に、老朽化し住むに堪えない状態になったマンションは、最後どうなるのでしょうか? 廃虚と化す? ごみの捨て場に? 非行少年のたまり場になる? ホームレスの宿になる? 不法滞在の外国人に占拠される?

様々な姿が思い浮かびますが、上記のようになるとしたら、オーナーは所有権を事実上放棄したということを意味します。売るに売れない状態になって長い時間が経過したからです。

 

維持管理に多額の費用がかかる劣化状況を迎えたが、改修工事を行うにも積立金では足らず、一時金徴収を求めても、また毎月の積立金の増額についても合意を得られず、結局は「劣化するがまま」になるのです。

 

これは、一般の土地付きマンションで将来を危惧する話です。修繕費の負担に耐えかねてメンテナンス放置の老朽化マンションが今後は加速度的に増えると予測されているのです。

 

「なんだ、それじゃあ、土地付きであっても土地なしの定借マンションと変わりないじゃないか」と思われた人もあるのではないでしょうか?しかし、現実には違うはずです。

 
  • 余命は維持管理によっても違ってくる

マンションの物理的な寿命は、理論的には100年以上と言われます。

ただし、詳細は割愛しますが、100年耐久コンクリートの使用と劣化対策を施した設計・施工であること、並びに長期修繕計画に基づき、必要な改修(改良と修繕)工事に必要な資金を積立てることなどが条件です。

 

人間は、定期的な健康診断を受け、異常があれば医師の指示に従い、日常は運動や栄養バランスを心がけることで長く生きることができます。それでも100歳まで生きる人は稀です。その原因のひとつは、弱い体に生まれてしまったからと考えられます。

マンションも同じです。強い体で生まれ、つまり高耐久マンションとして誕生し、日常の管理と定期診断、必要な手入れを行っていれば長寿命マンションとなりますが、最初から耐久性に劣る構造で、かつ手入れを適切に行わなければ短命に終わるのです。

 
  • 維持管理に関する当事者意識が希薄になる時期

最近のマンションは、ほぼ例外なく「長期修繕計画」とともに分譲されています。

しかし、計画は管理会社の提案に過ぎません。見直しを定期的に行い改定されるとしても、改修工事を実施するかどうかは管理組合の決議によります。

 

初めのうちは、適切に実施されて行くでしょうが、何十年も経過して来ると費用も嵩むので、なおざりになる部分も出て来て、時の経過は隠しようもない状態となります。積立金の不足が露呈する場合ももあります。やがては「今さら」の気分が蔓延して手入れが放置されてしまうのです。

 

一戸建ての家を思い浮かべてみるとよく分かります。一目で手入れを怠って来たと分かる老朽家屋が周囲に多数見られます。マンションも、いつか維持管理に対するオーナーの情熱が失われてしまうということかもしれません。

その時期がいつか、そこが問題ですが、それを読むことは困難です。

 

ただ、定借マンションの場合は「どうせ解体するのだから・・・」が根拠となって、一般マンションより「メンテナンス放置」の時期が早くやって来る可能性が高いのではないかと思います。

 
  • 人間の寿命とマンションの寿命

ところで、既に述べたマンションの寿命と人間の寿命を比べてみると、人間の寿命の方が長いケースも多い気がしてきます。

人間の寿命は80歳を超え、近い将来は90歳にもなろうかというレベルだからです。

仮に40歳で新築マンションを購入した人が90歳を迎えるとき、マンションは築50年です。まだ余命は十分あるはずです。しかし、維持管理にどこまで力が注がれるでしょうか? 快適な暮らしを続けられる状態にあるでしょうか?

 

定借マンションの場合は、契約期間が長い例で70年です。人間より短いのです。50年も経たものなら、残り少ない寿命の終わりを静かに待つというイメージでしょうか。

 
  • 子に美田を残さない考えの人なら

40歳の人が新築マンションを購入し、90歳で天寿を全うしたとしたら、購入したマンションはそのとき50歳です。一般マンションなら資産的な残存価値もあるので、子孫に残す意義はあるでしょう。

 

しかし、定借マンションの場合は70年契約でも契約満了まで20年しかないので、資産価値は非常に低いということになります。そんなマンションは要らないと子は相続を放棄するかもしれません。契約期間中は賃貸収入が得られるから貰っておこうという子もいるかもしれません。

前者は維持管理に費用が嵩むし、高い賃料はもう取れないので旨味は全くない。むしろ厄介なことを抱え込むことになりそうだ考えるためです。

 

このようなことを考えると、定借マンションを購入するときは、子に美田を残すという考えを排除しなければならないのかもしれません。

 

●定借マンションは高齢者が選ぶマンションか?

定借マンションは、ここを永住と定めた高齢者向きのマンションではないか。そんなふうにも考えられます。残りの人生を30年あるかなしかというときなら、他界したときも子孫は余命の長いマンションを美田として受け取れるかもしれないからです。

 

ケアが必要な状態になって、ケア付き住宅や有料老人ホームに入居するために自宅売却を量ろうとしたとき、契約期間が十分残っているわけですから、土地付きマンションほどではないものの、良い条件で買ってくれる人が現われるかもしれません。

 

言い方は悪いですが、定期借地権マンションは余命の短い人向きと言えるのです。そう言えば、世田谷区で最近販売された定借マンションは隣接地に高齢者住宅も建設していました。あれは、分譲マンションを買った人の中から将来移住を希望する人もあるだろうと見込んだのかもしれませんねえ。

 

●建て替えが困難なマンションの将来を思うとき「定借」もありか?

閑話休題、マンションは老朽化が進んで、補修・補修の連続という状態になると、建て替えた方がいいのではという話が出て来ます。ところが、建て替えるためには、法律でオーナーの80%以上の同意が必要です。

80%の合意形成というのは途轍もなく高い壁です。

資金をどうするかが一番の壁です。これまで全国で建て替えが実現したのは200例くらいしかなく、それも着工までに10年以上を要しています。

 

デベロッパーが参画するには、それなりのインセンティブがなければなりませんし、資金負担ゼロで建て替えるのは事実上不可能に近いのです。

 

資金がなんとかなりそうだとしても、高齢のオーナー居住者は一旦仮住まいして再び戻るのは面倒だし、体力的にも避けたいなどと言います。他方、エゴをむき出しにして多額の金銭要求をするオーナーがいないとも限りません。

 

老朽化マンションは年々増えて行きます。これが近い将来大きな社会問題になりそうだと指摘する人は少なくありません。

現時点では築60年が最も古いマンションということになるのですが、あと10年も経つと築70年マンションがそこかしこに醜い姿をさらけ出すかもしれません。そうなると、都市景観上も好ましくないと語る専門家も目立ってきました。

 

行政が資金補助に踏み出さない限り、マンションの建て替えは進まないのではないか、個人的にはそう思っています。

 

その点、定期借地権マンションは最初から期限が来たら解体すると決められたマンションと言ってよく、建て替え後に再居住できるわけではないものの、少なくとも都市の美観を損ねることはないと言えるかもしれません。

 

●契約期間がカギを握る定借マンションの資産価値低下スピード

脱線しましたが、定借マンションであっても購入者が気にするのは資産価値です。

50年以上先に資産価値がゼロになることは理解しているが、その手前ではどうなのか?値上がりは期待しないが、どのくらい損をするのか、一般マンションより安く買うことができたとしても、最終的には、「安物買いの銭失い」ということにはならないのか?

このような心配があるというのです。補足すると、「永住をすることは考えにくい。永住するつもりではあるが、どこかで売却することがあるかもしれないから」という思いが頭の片隅にあるのです。

 

定借マンションの期限は契約で50年以上と決まっています。仮に50年契約だったとすると、購入から20年を経過したら余命は30年となります。

余命30年と決まっているマンションを高値で買ってくれる人はあるでしょうか?

 

「30年住めれば十分。資産価値がゼロになっても気にしない。賃貸マンションに住むのと比べたら、室内を好きなようにリフォームできる分がメリットだ」などとして買ってくれる人もあるかもしれません。しかし、その代わり価格はそれなりの安さを求めるはずです。

 

しかし、仮に70年契約の定借マンションであったらどうでしょうか? 購入から20年経っても余命は50年ということになります。50年あれば、一般マンションの寿命と大差ないと思う人も少なくないことでしょう

 

であれば、価格も極端なことにはならないはずです。

契約期間が50年か70年かでは、売却価格に大きな差が生まれる可能性が大ということです。

定借マンションの資産価値を左右するのは土地の賃貸契約期間ということになって来るのです。

 

・・・・・・本日はここまでです。ご購読ありがとうございました。

 

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