1/30 第120回 中古マンションの価格は何故上がる?

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新築マンションの価格が上がるのは、土地代と建築費という2大原価が値上がりするからだろうと容易に理解できるものですが、中古マンションは何故上がってしまうのか、分かっているようで分からないという声も少なくありません。

 

今日は、中古マンションの価格上昇の構図を解説しようと思います。

 

●中古マンションの査定は過去の取引事例に基づく

中古マンションの売り出し価格を決めるとき、持ち主は「我が家は今どのくらいで売れるのだろう」と先ず考えます。

 

ポストに投げ込まれたチラシを見て、上の階の同じ間取りの部屋が〇〇万円で

売りに出ていると知り、「うちも、これに近い値段で売れそうだな」などと予断を持ったとしても、売却を依頼する候補業者に価格査定をしてもらいます。

 

業者は「査定書」を提示します。その書面には3種の数字が書かれています。呼び名は業者によって少し違いはありますが、最高額が「チャレンジ価格」、最低額が「保証額」、その中間が「査定額」といったものです。

 

中間の査定額は売れそうな額と称するもので、過去の取引(成約)事例に基づいているので自信が持てそうな金額ということになるのでしょう。

 

チャレンジ価格は「これで売り出してみましょう。このマンションに目をつけていたという買い手さんがタイミングよく表れてくれれば、この金額でも売れるかもしれませんから」といったものです。

 

売主は説明を聞き、相談しつつ売値を決めます。その後、業者と「媒介契約」を締結して売却活動のスタートを切ってもらうのです。

 

さて、基準となる査定額はどのように弾き出すのでしょうか?

 

宅地建物取引業法では、査定額の根拠を依頼者に説明しなければならないことになっています。売値を安くすれば、買い手はたちまち現われ業者に手数料の収益をもたらすことでしょうが、高値で売り出せば、何か月経っても売れずに一銭にもなりません。業者としてはなるべく安く依頼して欲しいという本音があります。

 

しかし、売値を不当に安くしたことで、売主に不利益をもたらすようなことになってはなりません。その点に法の精神があります。

 

その説明は、取引事例比較法によるとされます。つまり、同マンション内の取引事例、それがない場合は近隣の類似物件を探してベンチマーク(指標)とします。

 

こちらの方が階数で5階上になりますし南向きなので、プラスが見込めます。あちらは4900万円、坪単価で@250万円ですが、こちらは@270万円の総額5300万円、買い手心理を考慮して5280万円であれば比較的楽に売れると思いますなどと説明するのです。かなりアバウトな根拠ですが、数字の差を聞いて満足する売主もあるのです。

 

不動産流通近代化センターが策定した「査定マニュアル」を用いて計算した査定書も見たことがありますが、途中の計算式が複雑でもっともらしいだけで、出て来る査定額はアバウトな査定と大差がありません。

 

差が付くとしたら、業者の受注戦略という思惑が極端に加わった場合です。つまり、高い価格を提示した方が媒介契約を取りやすいという業者の判断が働いたときです。

 

●価格を引き上げたい売主は市場の空気を読んで高値を希望する

いずれにせよ、売主なら誰でも、高く売れるものなら高く売りたいと考えます。5000万円が妥当という場合に1億円で売って欲しいと望んだところで現実的ではありませんが、5500万円なら「ひょっとして」と思わないでもないのです。

 

売主はこう語ります。「新聞によれば、中古相場が上がっているというじゃないか。ここも以前の相場よりは上がっていると見ていいのでは?」と、世間の空気を読んで査定額を超える売り出しを希望します。

 

ゆえに、高く売ってくれそうな仲介業者を歓迎し、その業者に依頼する売主が多いのです。

 

●売主の言い値で成約になるとき・ならないとき

業者は、高値で請け負っても売れなければ一銭の収入にもならないので、1~2か月様子を見て、反応が悪いときは売主に売り出し価格の引き下げを要求します。「チャレンジ価格は無謀でした」や「強気過ぎたようです」などと弁解しながら、売主に妥協を迫るというわけです。

 

ところが、運よく最初の言い値で買ってくれる買い手が現われることもあります。しかも、同じ日に3人が重なり、どの買い手も気にいって買いたいとなったとき、ある業者はこう囁きます。

 

「買い手さんが3人重なりましたので、価格交渉(指値)はできそうにありません。この値段のままで意思表示をして頂いた方がよろしいでしょう」と。

 

こうして、うまく行けば売主の言い値で決まってしまうこともあるのです。

 

●取引価格が変動して新たな指標に

このような現象がたくさんの物件で起きれば、過去の事例金額より高い実績が記録されます。

 

記録とはREINS(不動産流通機構)のデータベースのことですが、業者だけが見られるサイトに正確な取引金額として残ることを意味します。

 

こうして、過去には5000万円だった相場が5500万円に上がったりするのです。

 

下がり相場も同様です。何度も価格を引き下げてやっと買い手が決まったというとき、その記録は過去の事例より低い金額となり、新しいベンチマークになってしまうのです。

 

こうして中古の相場は変動します。

 

●新築価格に連動する中古価格

ところで、中古マンションの価格を新築マンションとの関係で見たとき、どのようなレベルになるものでしょうか?

 

過去の成約事例によって次の売り出し価格が決められるということは分かったとして、そもそも、その取引が成立する根拠や背景はどんな所にあるのでしょうか?

 

原始価格とでも言えばよいでしょうか、ずっと前に遡ったときに誕生した取引価格はどのように決まったのでしょうか?

 

やはり、何らかの指標があったはずです。そうです。それは新築マンションの価格なのです。どのマンションも最初は新築だったはずで、何年か経ったとき、それを市場に出す人がいて、最初は手さぐりだったはずですが、「中古でもこのくらいの価格なら買ってくれる人がいるんだ」という実績ができます。そうして、業者も学習したのです。

 

比べるものは新築価格でした。それは今も生きているのです。

 

日本人は新築志向が強く、中古を嫌う傾向があります。しかし、車でも中古が流通するように、価格が安いということから積極的に中古マンションを狙う人も次第に増えて行ったのです。

 

しかし、同じような立地で同じブランドで、同じような品質でも「気持ちの良さ」から新築がやはりいい、設備の寿命も心配だし、壁紙も交換したいからリフォーム代もかかりそうだし、そんなことを考えると1割くらいの安値では魅力を感じないと、最初は誰も見向きもしなかったはずです。

 

しからば、「えいっ、では新築のあちらより30%安ならどうだ!」と値段を下げたら、たちまち売れた。このような事例が多数出現して行った結果、新築を100としたとき、築10年の中古は70だ、こっちの地域は80だなどと、新築対比で見た中古価格という概念が誕生したのです。

 

新築マンションの価格が急騰すると、安い中古に目を向ける人が増えます。中古人気という状況が生まれるのです。結果的に中古も値上がりします。

 

このような相関関係が新築と中古の間で出来上がっています。言い換えると、需要と供給の関係で価格が成立するのが中古マンションです。

 

新築はメーカー希望小売価格のようなもので、価格は硬直的(※)ですが、中古は市場にゆだねるというイメージになるのです。オークションのようなものかもしれません。

(※ 第116回 「新築マンションの価格硬直性」を参照ください)

 

●新築の供給がないエリア・供給過多エリアにおける中古価格

新築が上がると連動する中古も上がるのですが、新築の供給がないエリアの中古はどうなるのでしょう。

 

その場合は中古を買うしかないので、中古人気は高くなり、過去の取引事例は上方修正の形で崩れます。最近のような価格高騰期には、少し前に販売していた新築マンションと肩を並べる価格で取引が成立したという例が多数誕生することとなるでしょう。

 

反対に、たまたま新築の供給が重なった、いわゆる一時的供給過多地域の中古は値下がりするかもしれません。かもしれないと曖昧な表現を使ったのは、一概に言えない理由があるからです。

 

新築マンションが、いずれもタワーで引き渡し時期が2年先であるといったような場合、すぐに住める中古が魅力と感じる人もありますし、駅から10分のところにある新築に対して、駅前などの、はるかに立地条件が良いという場合も、その中古は新築に勝るとも劣らないという例があるからです。

 

また、供給過多と思われる地域が、実は広域動員できる魅力的な街、または物件であった場合、それは供給過多でも何でもないので、中古はそれまでと同じような価格で取引が続くのです。

 

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価格の成り立ちや新築との関係、市況などを知ることで、売り出しのタイミングや売却価格の決め方などの参考になるはずですが、いかがでしたか?

 

買い手の立場でも、売り手の思惑を知っておくことは良い物件を見つけたとき、買い手としてのスタンスをどこに置くべきかを考えることに役立てていただけるものと思います。

 

・・・・・・本日はここまでです。ご購読ありがとうございました。

 

 

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