「内覧会に建築士を同行するサービス」利用の是非
マンションの内覧会のチェックを専門家に依頼する人があります。
勿論、有料ですが、その金額は5万円~20万円。決して安くはないようです。マンションの内覧会でのチェックは、目に付きやすい傷や汚れなどは直ぐに
見つかりますが、マンションの設備や配管などの分野ではチェックが難しいものもあるため、建築士など専門家に依頼するのは、それなりに意味があります。
専門知識に乏しく不慣れな買い手は、そばに知識の豊富な人がいてくれると
何かと安心ですね。そのために費用をかけるという人がいてもおかしくはないからです。<売主の良識を信頼すればいい>
しかし、高い費用を払ってまで、専門家に同行を依頼するまでのことはない
と当職は考えるのです。なぜなら、良心的なマンション事業者というのは、自社の専門員による
「施主検査」(施主=マンション事業者=発注者)を先に済ませ、厳重な点検を実施しているからです。つまり、重大な部分の施工ミスがあれば
既にそれを発見し、手直し工事も完了済みで、万にひとつも欠陥のない商品として
お披露目するスタンスなのです。
「ユーザー検査=内覧会」は、あくまで買い主さんの目で確認してもらい、
納得の品を受け取って欲しいという思想によるものです。ただ、ちょっとした傷や汚れなどの細かな不良部分は専門員たちでも気付かないで
通過してしまうことがあります。その点から、内覧会は意味がありますが、専門家の領域というわけでもありません。
<専門家でも発見できない欠陥・瑕疵>
また、専門家に依頼したとしても、欠陥マンションの発見までは及ばないことも
覚えておきましょう。内覧会の同行程度では、マンションの建物としての欠陥や瑕疵を判断することは不可能なのです。
欠陥を判断するには1住戸としてではなく、マンション全体を見て行かないと
判断できないということです。では、ひとつの建物として検査すればいいということになりますが、それは非常に困難です。そもそも、工事が完了して
しまったあとでは、マンションの一棟検査は個人が負担できないほどの金額が
かかります。瑕疵は、短時日の検査では分からないことも多く、何年か経って
発見されることが普通だからです。
以上の点からも、専門家に依頼すれば安心できるかというと、それは気休めに
過ぎないことも多いと思うのです。それでも、依頼者の「安心感につながるならば」と、かく言う当職も依頼を引き受けることがありますが、デベロッパーから警戒され、ときに嫌われるこの仕事は、
あまり好きにはなれません。