最近、YouTubeやSNSである「魔法」が紹介され、静かな話題を呼んでいる。平面の間取り図をAIに読み込ませるだけで、一瞬にしてその中を歩き回れる3D空間が出来上がるというのだ。
「もう家具の配置で悩む必要はありません」
そんな魅力的な言葉とともに、画面上でスルスルと立体化していく図面。新しいマンション選びの形に期待を寄せたユーザーも多いかもしれない。
仕組みはこうだ。Googleの最新AI「Gemini」に間取り図を送り、「Three.js」というプログラム言語を使って歩き回れる空間を作って、と命令する。AIが裏側でコードを書き上げ、一瞬で3Dモデルが立ち上がる。一人称視点でリビングや寝室を移動する映像は、確かに一つの未来を感じさせるものだった。
果たして、ネットで流布されているこの「魔法」は本物だろうか。真偽を確かめるべく、私は自らこの「魔法」に挑んでみることにした。
This started as a flat 2D floor plan.
and I’m sharing the exact AI method I used to turn it into a 3D tour inside freepik Spaces 🧵 pic.twitter.com/qCKolFlM7u
— TechHalla (@techhalla) 2026年2月17日
3LDK・70平米をAIに託す
検証の舞台に用意したのは、都市部でよく見かける標準的な3LDK・70㎡の間取り図だ。元の画像は少しボケてはいたので、まずはGeminiに鮮明化を依頼した。これを改めて読み込ませ、SNSで推奨されていた「呪文」を投げかけてみる。「この間取り図をThree.jsを使って、一人称視点で歩き回れる3D空間のHTMLコードを書いて」
AIの返答は驚くほど速い。数秒後には、画面が難解なプログラムの文字列で埋め尽くされた。一歩間違えればフリーズしてしまいそうな情報量だ。複雑なプログラムになると手に負えなくなる私のような人間からすれば、この圧倒的な処理スピードには、ただただ感心するほかなかった。
もし、このコードが正しく動くのであれば。建築図面を読むことに慣れていない一般の検討者にとって、平面図から立体的な生活空間をイメージする強力な助けになるかもしれない。そんな可能性を頭の隅に置きながら、生成されたコードをブラウザに貼り付け、実行ボタンを押した。
現れたのは「異世界」だった
ブラウザに映し出されたのは、検討している住戸とは似ても似つかぬ光景だった。確かに立体的な空間は立ち上がっている。だが、そこには実用性とは程遠い「異世界」が広がっていた。まず、部屋の配置が支離滅裂だ。リビングの横にあるはずの洋室が消えていたり、廊下であるべき場所に巨大な壁がそびえ立っていたりする。さらに驚くべきことに、テーブルらしき家具が床から離れ、中空に浮いているのだ。一人称視点で歩き回ろうにも、どこからが部屋でどこからが壁なのか、境界線すら判別がつかない。
原因は明白だ。AIは「間取り図の画像」を眺めて雰囲気をつかむことはできるが、壁の厚みやドアの正確な位置をミリ単位の「数値」として読み取ってはいない。いわば、物差しを持たない建築士が、目分量だけで適当な設計図を引いてしまったような状態である。SNSで見たあの滑らかな内覧体験は、かなり作り込まないと出現し得ない3D空間なのだと、私は理解した。
AIが迷子になった必然
なぜAIは、これほどまでにあっけなく「迷子」になったのだろうか。理由は、AIが持つ「能力の偏り」にある。例えるなら、現状のAI(Gemini)は「視力は抜群だが、物差しを持っていない建築家」だ。間取り図を見て、「ここにリビング、右に洋室がある」という大まかな雰囲気をつかむ力は極めて高い。だが、いざ立体として組み立てようとすると、「壁を何センチ右に置くか」という厳密な数字の壁にぶつかる。
3D空間を作るThree.jsの世界は、0.1ミリの狂いも許されない座標(数字)の積み重ねでできている。一方、AIが読み取るのは「概念」であって「数値」ではない。熟練工のような「阿吽の呼吸」が通じないデジタルな大工に、目分量の設計図を渡せば、空間が歪むのは自明の理だろう。
AIは「一瞬で魔法を見せるエンターテイナー」としては優秀だ。だが、1センチの誤差が使い勝手を左右するマンション検討において、正確な「ナビゲーター」を演じるにはまだ解像度が足りない。
道具を手なずけるまでの距離
今回の検証を経て得た確信は、至極まっとうなものだ。AIを使いこなすまでのプロセスは、英会話を身につける過程に驚くほど似ている。巷には「短期間で、簡単に」という甘い言葉が躍るが、現実はそうではない。英会話が一朝一夕で身につかないのと同様に、AIもまた、ボタン一つで万能の結果を出す魔法の杖ではないのだ。
思い通りにいかない結果を前に、何が足りないのか、どう指示を変えるべきかを考える。こうした試行錯誤の毎日こそが、道具を真に手なずけるための唯一の道ではないだろうか。
日々の失敗を楽しみながら、AIとの距離を少しずつ縮めていく。結局のところ、最強の3DシミュレーターはAIを使いこなせるだけの「自分自身の想像力」なのかもしれない。
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