第241回 「マンションの買い時は近づいている?」

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

今日は、第239回 「コロナの流行で不安な情勢下、購入に踏み切ってもよいのか?」の中でもお伝えした「模様眺め」に関して補足しておきたいと思います。

 

筆者の仕事は「マンションの購入相談」を受けることですが、今日も具体の物件についてのご相談が届きました。コロナ問題など無関係な人なのでしょうか。勤務先は分かりませんが、会社員さんであることだけは確かです。ご相談者は候補マンションについての評価と10年後価格を予想してほしいというものでした。

 

いつものご依頼で、筆者にとって特別なものではありません。直近のご依頼者の中には「こんな時期だから予想はしにくいことでしょうが・・・」と書き添えてくださる人もあるものの、大半は世間の不安とは無関係とでも言いたそうな人からのご依頼です。

 

最近は依頼件数が減っているので、コロナ騒ぎが無関係とは思いませんが、今もマンション購入を検討中の人は少なくない実感があります。

 

買いたい時が買い時・・・この言葉をお聞きになったことは?

前回の記事で書きましたが、良い物件・割安な中古に出会う確率は高まっているのかもしれません。とはいえ、優良な物件は今も変わらず動いています。慌てることはありませんが・・・

 

マンション業界の先輩から「買いたい時が買い時だよ」と教わったことを久々に思い出しました。

 

丹念なチェックを続けながら、「住みたいマンション」を見つけましょう。ただし、どのくらい待ったら良いかの答えはないのです。そう言えば、「マンション探しは男女の出会いに似ている」と語った人がいたことも思い出しました。

 

候補物件の探索、厳選しての見学などを続け、無理をしないで買おうと心の中で叫びつつ、出会いを信じましょう。世間が様子見するならチャンス到来でもあるのです。不況でも家賃は下がりません。金利も低いままで推移するでしょう。

 

「今はマンション購入に踏み切るときではない」とか、「マンションどころではない」などという姿勢の人も増えているのは確かです。しかし、「買い時はいつも今」というのも一面の真理なのです。

 

「逆張りの発想」ではありませんが、世間の動きに囚われず「買いたい時こそが買い時」と思って行動している人も少なくないことを補足しておきます。

 

買い手が減って中古マンションに下げ圧力

新築マンションは土地代と建築費の2大原価によって価格が決まってしまうこと、そのうえ利幅が大きくないので、価格の下落圧力は低いものですが、中古マンションは購入価格と売出し価格との幅が大きく、下げ余地もたっぷりあるようです。

 

買ってから時間が経って、住宅ローンの残高も大幅に減っているからです。そこで、売れなければ売却を諦めるより値下げして様子を見ようとする売り手が増加します。

 

直近では見学希望者も減っているため、値下げを考え始めた売り手も増えているそうです。強気の価格で売り出した持ち主は反応がなく業を煮やしているとも聞きます。市場は下げ圧力を強めていると見てよさそうです。

 

無論、物件の人気度で差異はあるでしょうが、仲介業者と相談しながら反応が弱まっている物件なら、思い切って指値をしてみるのも一考です。

 

買い手が減れば売り値は下がる

言うまでもなく、中古マンションは買い手が付かなければ値は下がるものです。見学希望者が全くないか、あってもたまにしか現れない。見学してくれたものの、色良い返事はなかったとか、大きな指値が入って商談は中止といったことが何度か繰り返されると、売主は焦ってきます。仲介業者と相談しながら、値下げのタイミングを測ったりもします。

 

基本的に、中古マンションの買い手探しは仲介業者の自社ホームページに掲載するかSUUMOスーモなどのサイトに広告を出して反応を待つしかないのです。

 

見学希望者が毎週2組も3組も現れる物件ならば、媒介契約の3か月という期間の中で買い手を見つけることは可能ですが、週に1組あるかないかの鈍い反応しかない物件は買い手を期間中に決められず、市場で棚ざらし状態となってしまいます。

そうなると、ますます売れなくなって売主は焦り、見学者の要求を呑む決断を迫られるのです。つまり、大幅な値引き要求を呑むのです。

 

形勢逆転です。長い間、強気だった売り手は慌て出し、弱気な姿勢を見せるようになっているはずです。多い切って大きな金額を提示してみましょう。ようやく買い手有利の時勢になったのですから。

 

新築も値引き交渉のチャンスが来た

壁が厚かった新築マンションにも値引き交渉のチャンスが巡って来たかもしれません。表向き、新築マンションは値引きが難しいものです。定価で買った先行契約者のクレームを恐れるためで、完成した建物の中に設けた、いわゆる「棟内モデルルーム」に限って値引きができるのが一般的です。

 

まっさらな蔵出し商品でなく、モデルルームは多数の見学者の手に触れさせる「いわばサンプル品」になるので、値引きして売っても定価契約者から文句は来ません。

棟内のモデルルームや接客室や事務室は、養生をしたとしても、また禁煙にしたとしても、またトイレを使用禁止にしたとしても、定価で売ることはしないのが一般的です。

 

モデルルームが売れてしまえば、別の部屋を新たなモデルルームに設定しなければなりません。

 

また、販売の戦術上、同時に複数のモデルルームを用意する場合もありますが、それらを値引きして買い手が決まったら、新たなモデルルームを設け、それらもまた値引きして販売します。

 

モデルルームにしない部屋は定価販売する建前ですが、実態は不明です。モデルルームとして公開していない部屋でも、定価購入者からの抗議対策用に、モデルルームでないものは大幅な値引き販売はしていないという建前を採るものの、本当のところは分からないのです。

 

尚、売主は値引きした契約者からは「けっして口外しない」旨の「誓約書(念書)」を書かせるのが普通です。値引きなしで買ってくれた顧客に知られることを恐れているからです。

 

これから購入を検討したい人は、モデルルームの値引き率を探り出し、買いたい部屋の価格も同率で値引きしてもらうよう交渉すれば、その成功率は低くないはずです。関東人は値引き交渉が下手だと言われますが、もし気に入ったマンションが見つかったら、是非挑戦してみたいものです。

 

価格は下がりそうだと知って動き出す人も浮上する

2016年以)、首都圏のマンション購入者は激減しました。直近ではもともと少なかった中古の購入者を下回るほど売れ行きは低迷しているのです。

 

2000年~05年頃は、グラフのとおり大量の新規供給が行われましたが、価格の高騰(バブル崩壊後初の上昇)もあって、2008年にはピークを打ちました。2008年には4万戸台に激減、一時5万戸台を回復(2013年)したものの、翌年2014年からは再び4万戸台、2016年以降(グラフ外の2019年まで)は3万戸台と激減したのです。


 

供給戸数が減ったのは、用地難が背景にあったとはいえ、それだけではなかったのです。価格が上昇して売れ行きが悪化したためです。供給の担い手(デベロッパー)の倒産も一時続いてマンション市場は急速にしぼんでしまいました。

 

売れ行きの悪化にもかかわらす、新築マンションの価格は上昇を続けて来ました➡折れ線グラフ。


 

売れ行きが悪化したのもうなづけましょう。それでも新築マンションの価格は下落しませんでした。

2019年後半から、ようやく頭打ちになったものの、いまのところ需要の回復にはつながっていません。

 

売れない新築マンションが竣工すると、事業主(デベロッパー)は施工業者に建築代金を支払わなければなりません。通常、その支払いは販売代金を充てますが、売れていなければ資金繰りを悪化させます。新たな借り入れを起こす必要が出て来る企業もあります。

借入金の増加は経営を圧迫しますが、今は低金利のせいで資金調達後の負担は小さいのかもしれません。

しかしながら、売り上げがなければ経営は成り立ちませんし、値引き販売によって利益も減りますから、経営は危機に瀕します。

 

そうこうしている間に市況は好転する?

最後は体力勝負ということになりますが、販売不振は体力のない中小デベロッパーを窮地に追い込むことでしょう。業界全体で見れば、昨今は大手が中心なので余裕のない企業は少ないのですが・・・

 

ともあれ、大手といえども売れなくてよいはずはありません。遅れながらも販売促進を図ろうと賢明です。問題はその策ですが、特効薬はありません。否応なく値引き策を講じるはずです。

 

予算の少ない買い手や、高値警戒感から様子見に転じていた買い手を刺激する値引き策は、需要掘り起こし策でもあります。

歴史あるデベロッパーは昔の記憶を思い起こして「値引き作戦」に踏み切ることでしょう。実は、既に実行している物件も散見されます。

 

今後、値引き作戦は拡大するに違いありません。ただ、値引き作戦で販売促進を図るというのは実は容易ではありません。それでも他に手はないのです。

ともあれ、この作戦に加えて、販売担当者の懸命な努力によって、遠くない将来、在庫を一掃するに違いありません。

 

筆者の経験と観察、研究から言えるのは、「マンション販売に特効薬はない」という点です。唯一の策は値引き作戦ですが、悩ましいのは、値引きを広告でアピールできないことです。広告で使えないのでは折角の武器も意味を持ちません。

最も効果的なアピール策は「20%値下げ」や「モデルルームに付き、000万円を000万円に」などの広告表現ですが、これを用いる前に大きな障害を取り除く必要があるからです。

 

障害とは、値引き策導入前に高値で買った買い手からのクレームです。値引き販売は法的には何ら問題はないものの、騒ぎになることが障害なのです。

 

昨今は何かあればすぐにインターネット上で批判され、売主の評判を落としかねません。営々と築いて来た信用を落とすことを企業は恐れます。

 

値下げ販売は諸刃の剣(もろはのつるぎ)になるというわけです。それを防ぐためには、既契約者にも同率で値引きする旨の通知をしなければなりません。しかし、それを断行するということは、大赤字を決断することを意味します。

 

企業存続のために、ごく少数の売れ残り物件を値下げすればすむということなら断行するデベロッパーは出てくるかもしれません。失敗プロジェクトとして見切るという経営判断はあり得ることですから。しかしながら、ひとつやふたつのプロジェクトではすまない可能性もあり、悩ましい課題です。

 

買い手側から見て、大幅な値下げは嬉しいニュースとして届くことでしょうが、希望する地域・沿線の物件である確率は低いと見なければなりません。

 

・・・・・ともあれ、大幅な値下げ販売は市況が好転するまでの窮余の策に過ぎません。ごく一部のプロジェクトに限っての策です。他のプロジェクトは、限度いっぱいまで利益を落とすとしても、近年の価格上昇期に仕込んだ物件ゆえに、目覚ましい効果を表すレベルの値下げができるかは極めて疑わしいのです。

 

デベロッパーにとって、冬の時代が来たのは間違いありません。実はこの数年は既に冬でした。それだけに、今後は厳冬の時期を迎えるということになるのです。

 

それが何年続くかは今のところ見通せませんが、買い手の立場ではその時期を見通すことより、今販売中の物件の中から値引き交渉をして買うことを勧めます。少なくとも10%引きを狙いましょう。大半の新築マンションで可能性はあるはずです。

 

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

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