第205回 販売促進の裏技と買い手の駆け引き

スポンサードリンク

このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

モデルルームに使用予定だった部屋を特別価格で販売する」こんな情報に最近出会いました。滅多にお目にかかれない話です。

 

10%近い価格調整の提示があって、「前の契約者が手付金を放棄したので、その分を還元する」という説明(言い訳?)はよく聞きます。

先月は多くの業者の決算期だったためですが、「今月は弊社の決算期なので、月末までに決済してもらえれば〇〇%引きで売ることができます」という話もたくさん聞きました。

しかし、まだ使ってもいないモデルルーム予定住戸をモデルルームとして使ったのちに安く売るというのは、策がなくなったからでしょうか?

 

値引き販売するときの状況は、一般に売れ行きが悪いときです。売主はあの手この手で販売を進めようと図りますが、最後の策は値引きです。これ以上に強い策はありません。

ただし、値引きに当たっては「売れないから引きます」とは言いませんし、広告等で大々的に「値引きセール」を打ち出すこともありません。何故でしょうか?

 

「売れないから」は、弱音を吐くようなものですから、足元を見て巨額な値引き要求をして来る買い手を増やすことにつながります。そうはさせたくないので、極力「売れ行きは良い」を見せ続けたいのです。

 

明らかに売れていないと分かる物件の場合で、「商品ストックがないので、ゆっくり売っているだけだ」と言い訳している売主もあります。ともあれ、明らかに売れていないと言えるのは、建物が竣工してから半年も経過して販売中の物件だからです。それでも、売主は「間もなく完売する見込みだ」とか「先週も売り出してから1週間足らずで決まってしまった」などと煙幕を張って売れ行きの悪さをひた隠しにします。

 

現場の営業マンの使命は定価で販売をすることで、値引き販売することではありません。

企業は利潤を追求するものです。最後に投げ売りする例が全くないわけではありませんが、マンションの利幅はもともと大きくはないので値引きしても僅か、極力定価で完売しようとします。

 

「広告で値引きセールを打ち出すことをしない」のは何故でしょうか? 

物の値段は、ときの情勢で変わるものです。朝のサンマと夕方のサンマでは値段が変わります。マンションだって例外ではないのでは?

実際は違います。値引きセールが露見すると、先行契約者から「不公平だ」の抗議行動が起こります。係争に発展したこともあるのです。

同じ新築商品が購入時期によって価格に違いがあるのはおかしいということで裁判になったのです。正確に言えば同じ品は二つとないわけですが、例えば同じ面積の部屋が1階違うだけで500万円も安いのは納得がいかないというわけです。

裁判は業者の勝利でした。しかし、業者は裁判に買って信用を落とすことになりました。

 

インターネット時代になって、業者評判などというものは「あっという間に地に落ちる」こともあります。戦々恐々としながら商売をしなければならない今日、顧客とのトラブルは避けなければなりません。

このため、値引き販売の実施に当たって業者はことのほか神経を使っています。大義名分がない限り、表立って値引きをしていることを先行契約者に知られないようにします。モデルルーム販売なら「多数の見学者が出入りして手あかが着いた部屋だから」の大義名分が通るのです。

 

しかし、実際にモデルルームとして使っていた部屋以外も売りたい業者は、形式的に複数のモデルルームを用意したり、「予定モデルルーム」という奥の手を出して来たりします。それが冒頭の話です。引き渡しまでの期間は「他の客にも見せること」を条件として付け加えたりもします。

 

「モデルルーム販売」にしても、「決算期だから」にしても、「解約住戸の手付金還元」にしても、売り手から「お安くします。買ってください」と言って来たようなものです。つまり、値引き交渉の手間が半分以上省けることになります。

しかし、それで喜んでいたのでは賢い消費者とは言えません。なぜなら。まだまだ交渉の余地があるからです。業者にしてみれば下げたくはないが、背に腹は代えられないはずだからです。

そもそも売れないマンションの大半が割高であることを自ら証明してしまったのです。

高いという市場評価は、値下げすることで消えて行きますが、問題は値引き率です。値引きしてもらっても「まだ高い」のではないか? そう疑ってみることが必要です。

 

比較的悪くない物件でも、売れ残り住戸を見ると、条件が良くないものです。最初から価格を安く設定したにも関わらず、嫌われて来たのです。つまり、価格は一見安いようで実はまだ高い可能性があるということになります。

好条件の住戸(角部屋のルーフテラス付きなど)は、最初から強気な価格が設定されています。それでも強気過ぎなければ、ほどなく売れてしまうものです。それが売れないとしたら、高過ぎるからです。そこで売主(営業マン)の言い訳は、「売出し当初に、イの一番に売れた部屋なのですがキャンセルになってしまいまして・・・」。高いのではないかと買い手に疑われないようにする布石です。

 

とどのつまり、どちらの住戸も高いから残っているのです。条件の良い部屋なら高く買ってもまだケガは浅いので失敗とは言えませんが、条件の悪い部屋を「もともと安いのに売れず」から「さらに値引き」してもらった場合が問題です。

すごくお買い得な気分になりますが、そこで一度足を止めて調べましょう。「条件の悪い部屋をこの価格で買って大丈夫か」と。つまり、リセールの際に損が出ないか。果たして売れるのかといった自問自答です。

 

営業マンに尋ねても無理です。答えは決まっているのですから。

深く考えることはありません。相手は値引きしてでもも早く売りたいのです。買い手は安ければ安いほど良いのです。いくらが妥当かの根拠を知ってみたところで意味はありません。

「プラス〇〇〇万円。なんとかなりませんか?」と当たってみましょう。その反応によって考えましょう。

条件の悪い部屋を〇〇〇〇万円で買った場合、リセールで損をするかしないか、ボーダーラインはいくらか、それを知りたい場合は、ご相談いただくしかありませんが、まずは売主に当たってみましょう。ダメならやめればいいだけです。それがだめでも選択肢は他にもあるはずですから。

けっして「お願い」ないことが重要です。哀願調の交渉は負けなのです。「頼みもしないのに、いくら引きますから買ってください」の弱気な売り手を前ににしたときは、強気を通すことが主導権を握るコツです。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

 

ABOUTこの記事をかいた人

マンション業界の裏側を知りつくした、OBだからこその視点で切り込むマンション情報。買い手の疑問と不安を解決。マンション購入を後押しします。