第141回 マンションは10年で何%上がりますか?

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居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から「マンションの資産価値論を展開しております。

5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

 

 

「マンションは何年かすると上がる」と信じている人があります。しかし、「そういうこともある」という理解が正しいのです。

新築建物は引き渡しを受けた瞬間から劣化が始まります。建物が劣化すれば、当然価値は下がります。にもかかわらず価格が上がるのは何故でしょうか?

 

今日は資産価値に関する基本のキについて書くことにします。

 

●「中古が値上がりするのは地価が上がるから」は間違い

中古マンションが値上がりするのは、地価が上がるからだと信じている人がありますが、これは間違いと言って過言ではありません。地価上昇も一因ではあるのですが、間接的でしかありません。

 

中古マンションは買い手(需要)があって値段が付くわけです。郊外では、需要が少ない地域も多く、値上がりしないのが普通です。大幅に値下がりしたマンションも多数あります。

 

●中古の価格は新築マンション相場に連動する

中古価格は何故上がるかというと、新築マンションが上がるからです。では、その新築マンションは何故上がるのでしょうか?

 

新築マンションの価格は、原価の積み上げで決まるのです。2大原価の土地と建築費が上がるために価格も上がるのです。

 

地価が上がれば、マンション用地の取得原価が上がります。建築費も上がって販売価格が上がると、購買力とミスマッチ状態となり、売れ行きが悪くなります。マンションメーカー(デベロッパー)は売れないと困るので原価を抑える努力をしますが、限界があります。

 

地価は業者同士の競争(争奪戦)によって高くなることも多いですが、マンション業者以外も争奪戦に加わるので、一企業の力ではどうしようもないのです。

 

建築費は人件費の比重が大きく、ゼネコン業界が繁忙期にあるときは人手不足になって高くなります。ゼネコン自身が安い材料・設備などを大量に買い込んでおくとか、安い人件費で不慣れな外国人労働者を使うといった方法も考えられますが、現実的ではありません。粗悪な物ができてしまう危険もあります。

 

生コンなどはあらかじめ買っておくことはできませんし、人手確保も簡単ではないのです。

 

ゼネコン業界もこれまで建築費を安くする方法を様々考え実行して来ましたが、これはという策は定着しませんでした。ゼネコン業界は、下請け・孫請け・三次下請けという多層構造になっています。これが中間搾取を生み、建築費が高くなる根本的な問題だとする声がありましたが、現在も構造は全く変わっていないのです。

 

公共工事・オリンピック関連工事がなくなれば、暇になって仕事の奪い合いになる。マンション施工は面倒で儲からないと敬遠して来た大手も、赤字にならない程度に受注合戦をする。そうなれば、建築費は下がるという見方がありますが、果たしてどうでしょうか?筆者は、そうはならないと考えています

 

最後の手段は、デベロッパーが設計者にコストダウン策を指示することです。

具体的には、設計を簡易なものにする、設備を減らす、材料を高級品から普及品にする、デコボコの形をシンプルなものにする、コンクリートの量を減らすために階高の低い設計をする、同時に二重床構造を止めてしまう、柱が太くならないようにコンクリート壁をやめて軽量な「乾式壁」を採用するといった方法を採用することでコストを抑えるのです。

 

他には、本来はあった方がよい集会室(コミュニティルーム)や人気のゲストルームといった共用施設をやめて住戸とし販売面積を増やす、駐車場を機械式から青空の平面式にするとともに、花壇・公園・植栽の類は取り止めるといった策を講じています。

 

しかし、こうした策を講じても2013年以降、新築マンションの価格は上昇を続けて来ました。新築マンションの価格は、2012年を100とすると2017年は130にもなってしまったのです。

 

新築価格が上がると、手が出ない需要層は中古も検討するようになります。中古マンションに対する需要が増え、値上がりするのです。

統計では、新築が10%上がると中古も10%上がるといったふうに連動します。ただし、新築の値下がり局面では、新築が10%下がると中古は15%くらい下がったりしますが(理由は割愛)、折れ線グラフに表すと概ねパラレルになっています。

 

●立地条件が価格を左右する

ここまでは、マクロデータを基に説明して来ました。大量のデータ集積からトレンドやサイクルが法則性として見事に表れています。

ところが、統計というものは、あくまで平均値や最頻値、中央値などを示すだけです。不動産・マンションは個別要因が大きく、法則を鵜呑みにできないことが多いのも事実です。

 

同じ駅の徒歩3分と徒歩10分で価格が20%も違ったり、徒歩7分同士のマンションでも20%もの差があったりします。築30年のマンションが同エリアの新築と変わらないなどという例もあるのです。

 

エリア・沿線・駅によって変わるだろうことは誰でも想像できますが、その差は非常に大きいのです。建物の規模や形状、グレードなどでも、また管理状態によっても価格差ができますが、大きな変動要因は立地条件が一番です

 

どれほど建物が立派でも、立地条件が劣っていれば中古価格は高く評価されないのです。

 

●管理・メンテナンスでも変わる

新築志向が強い日本人は中古を嫌う傾向があります。このため、中古人気は特別な時期、特別な物件を除いて目を向けてもらいにくいのです。

 

その理由のひとつは、奇麗でないからです。中古でも新築並みに奇麗であれば抵抗は小さく、見学した人の購買意欲が後退することもありません。

 

奇麗にするというのは、清掃と整理整頓だけのことではありません。人間に例えると毎日お風呂に入って体を洗うだけでなく、しわを取り、髪の毛を増やすといった美容整形が必要です。

 

つまり、メンテナンス(改修工事)を隅々まで実施し、流れの悪くなった水道管や排水管を交換する、エレベーターを新品と交換するといった大手術をすることで美観も機能も新品に近づける、つまり若返りを図るのです。

 

これらのメンテナンスを隅々まで行なったかどうかで価格差が生まれます。

 

歯がなくなったら食事ができないのと同じでメンテナンスで無視できない重要な部分は防水工事と命の危険があるエレベーターの交換ですが、それだけに留めてしまうと、若返りはできません。

マンションは管理が大事とはよく聞く言葉ですが、管理とは「マンションを奇麗に保つこと」です。しかし、奇麗にするには、お金をかけてしわ取り手術もインプラント手術も、植毛もしなければなりません

 

●高さ・規模の違い

大きいマンションは、よく目立ちます。ビルの陰に隠れているようなマンションより、周囲の建物を圧倒する存在感があった方が誇らしいものです。

 

5階建てのマンションより10階建てのマンションが立派に見えるものです。

威風堂々、風格がある。体格がこじんまりしたマンションより大きいほうが価値は高くなるのが普通です。

 

ただし、大小は相対的なものなので、5階建てでも周囲が一戸建てばかりなら目立ちます。

 

●デザイン性は無視できない

規模や高さだけではありません。デザイン性も非常に大事です。デザインを言葉で表現するのは難しいものですが、簡単に言えば格好のいいマンションというわけです。

 

マンションを建てるデベロッパーも、デザインを無視しているところはなく、HPでお気づきのように、デザインという独立ページを設けてアピールしています。

 

しかし、筆者には「どれも大差ないなあ」と映ります。デザインが良いというのは、「格好いい・素敵」と買い手を感じさせるものですが、それが価格にどの程度反映するか、この答えは難しいものです。デザインがいいから10%高く売れるなどというデータは存在しないのが残念です。

 

●ブランド力の意味:「大手は高い」はウソ?

大手のマンションは高く、中小は安いということはマンションについては当てはまらないようです。大手も中小も利益率は大差がないからです。

仕入れ額である土地代も、大手は高くて中小が安いということはありません。建築費も同様です。中小のデベロッパーの方が安く発注できるということはないのですから。むしろ、大規模なマンション開発が多い大手はスケールメリットから建築費は安いことが多いはずです。

 

大手が高いと感じることがあるとしたら、中小より条件の良い土地が買えることが多く、良い条件の土地は高いからでしょう。

 

百歩譲って大手が高いとしても、その価値は価格以上かもしれません。なぜなら、大手には買い手に安心感を与えるからです。見えない部分でも安心・安全な設計・施工をしてくれているはずだという信頼があるので、高く売れる要素のひとつです。これこそがブランド価値というものです。

 

これは中古になっても同じです。ブランドマンションの方が高く評価されます。というより、買い手の心をキャッチしやすい、すなわち販売がしやすい。販売がしやすいということは、値下げに追い込まれにくいという意味があるのです。

 

ただ、30年も経つとブランドは関係なくなる感じがします。

 

●物件価値に見合わない高値で買うと損

素晴らしい立地条件、素晴らしい建物計画(規模も高さもグレード感も)という物件でも値上がりしないことがあります。

 

再開発マンションに多いのですが、街の発展が約束され、実際にも資産価値は上がった。しかしながら期待を裏切る結果になる場合があります。購入価格が高過ぎたからです。

 

「高い感じがする。単純比較では間違いなく高い。けれども、立地も建物も別格だから高いのは当然と思う。しかも将来性が高い。買っても大丈夫だろう」このような考えのもとに購入を決意。

なのに、失望する結果となるのは価値に見合う価格ではなかったからです。

 

結果論なのでしょうか?いいえそうではありません。事前にある程度まで読むことは可能なのです。

 

●人口減少も重要な要素になって来る

将来価値を予測するとき重要なファクターに人口の増減があります。かつては、東京一極集中を信じて疑わなかった人も多かったのですが、時代の潮流に変化の兆しが表れています。

 

人口が減れば、家を買いたい人も減るのは道理です。需要が減れば値段は下がる。これも道理です。東京都の人口は2025年がピークで、2026年から減少に転じるという予測が公表されていますが、広い東京の端部ではもっと早く減少に転じることでしょう。

人口が減っていない現在でも地域ごとにマンション需要の規模が既に大きく減らしている所があるのです。「消滅危険都市」などという有難くない形容詞付きで語られる街、街を小さくし集まって暮らす「コンパクトシティ構想の実現が近い街」「空き家が増えている街」などは将来性がないので、マンションの価値も低下して行くことになります。

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

 

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