「1億3613万円」
この数字を、まだ「頑張れば届くかもしれない新築価格」と捉えているなら、その認識は捨てたほうがいい。 不動産経済研究所(2025年1月発表)のデータによれば、23区の新築平均価格は1.3億円を突破した。
アベノミクス以降の低コスト期に決断し、すでに物件を手にした先人たちは正しい。彼らは「街の成長」を買い、資産を築いた。 だが、今からこの市場に参入する私たちが向き合っているのは、もはや「街の成長」ではない。
突きつけられているのは、資材費・人件費高騰を飲み込んだ「コストの精算書」である。
市場の変質:中央値ですら1億円を突破した
「平均値が上がったのは、一部の超高額物件が引き上げただけだ」という気休めは、もはやデータが許さない。不動産経済研究所が2026年2月に発表した「首都圏マンション 戸当たり価格と専有面積の中央値の推移」を見ると、 23区の価格中央値は1億1380万円に達した。
出典:平均価格は本当に「相場」なのか?
23区の新築平均価格は、二人以上勤労者世帯の平均年収(総務省「家計調査」)ベースで約10.6倍。 23区で新築を選ぶなら1億円は「最低入場料」だ。
なぜ、実需層の給与を無視して価格が上がり続けるのか。 主導権が「住む人」から、国内外の富裕層や法人といったキャッシュ購入層の影響を強く受けるようになったからだろう。
現金買いの投資家と同じ土俵に、年収の10倍という住宅ローンで挑む。 今の新築購入は、単なる住まいの確保ではなく、人生を左右する投資決断になりつつある。
支払った1.3億円は「建物の価値」ではない
1億3613万円という巨額の対価。 その内訳を解体すると、居住者が享受できる価値とは無縁の要素が大半を占めている。
出典:マンション建築費はどこまで上がったのか
不動産価格を押し上げている主因は、品質の向上というより建設コストの上昇だ。 2026年現在、建築費指数は2015年比で1.4倍を超えた。
デベロッパーは、このコスト増を吸収しつつ「1.3億円」に収めるため、 専有面積の縮小や設備仕様の簡素化を余儀なくされている。
私たちは今、2015年当時に平均価格約6732万円で供給されていた物件と比べても、 狭く、仕様を抑えた住戸に約2倍の価格を支払う状況にある。
つまり現在の価格は、供給側のコスト高騰がそのまま販売価格に転嫁された結果なのである。
「流動性」という名の壁:出口に潜むリスク
新築購入を支える最後の砦は、 「将来、買った価格以上で売れる」というリセール神話だ。 しかしこの論理には流動性リスクという視点が欠けている。
今1.3億円で買った物件を15年後に1.5億円で売ると仮定すると、 次の買い手には世帯年収1800万円超が必要になる。
さらに問題なのは、コスト高騰期に建てられた 狭小・簡素な住戸は、 中古市場では広く質の高い築古と競合する点だ。
買い手がいなくなるわけではない。 だが望む価格で売れるまでの時間は長くなる。 それは、人生の次のフェーズへ進む自由が制限されることを意味する。
新築は高い。中古も高い。では、どうする
物件サイトを眺めては閉じる。 そんな状況に、綺麗事は不要だ。答えは3つ。
- 新築プレミアムを「贅沢」と割り切る
新築には入居した瞬間に消える数千万円のプレミアムがある。 キャピタルゲイン前提で1.3億円を組むのは、戦略というより祈りに近い。 - 立地の希少性を見る
「駅近」だけでは差別化にならない。 見るべきは供給履歴と再開発だ。 - 未来の買い手の視点で考える
価格を決めるのは今の高揚感ではなく未来の買い手の合理性だ。
この高価格市場に参加するのか、 それとも別の勝ち筋を探すのか。
その判断はあなた自身に委ねられている。
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