2025年の東京23区マンション、結局『買い』だったのか――3年間の価格・成約データで検証する

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2025年が終わろうとしている。

「今年こそ買おう」と決めていた人、「もう少し様子を見よう」と判断した人。それぞれの選択は、正しかったのか。

感覚や予測ではなく、不動産経済研究所とREINS Market Watchのデータで、2025年の23区マンション市場を総括する。数字が示すのは、多くの人にとって厳しい現実だった。

新築マンション:3年で別次元に突入した価格

23区の新築マンション市場を四半期ごとの平均単価で追うと、構造的な変化が見えてくる(次図)。

2023年第1四半期、平均単価は184.5万円/㎡だった。2024年に入ると170万円台で推移していたが、2025年第4四半期、226.9万円/㎡に跳ね上がった。わずか数か月で、23区の新築マンションは別次元の価格帯に突入した。

※2025年12月データは未公表なので、2025年Q4は11月データまで。以下同じ

23区新築マンションの平均単価と契約率の推移(四半期別)
70㎡のマンションで計算すれば、2023年初めなら1億2,917万円、2025年第4四半期には1億5,883万円である。約3年で3,000万円の差だ。

契約率を見ると、この価格上昇にもかかわらず市場の熱は冷めていない。2023年から2025年にかけて、60~80%台の契約率を維持している。高くても買える層が確実に存在し、彼らが市場を支えている。

なぜ価格は下がらないのか。供給側のデータが答えを示す(次図)。

23区新築マンションの発売戸数と平均単価の推移(四半期別)
23区の新築マンション発売戸数は、2023年が11,909戸、2024年が8,275戸、2025年は11月時点で6,666戸。約3年で4割以上減少した。一方で平均単価は右肩上がりを続けている。物件の供給自体が減り、希少性が価格を押し上げている。

「待てば下がる」という期待は、少なくとも2025年までのデータでは裏付けられなかった。供給減少と富裕層需要により、新築市場は高止まりを続けた。

中古マンション:『新築の半額』は過去の話になった

新築供給が細る中、中古市場に需要がシフトした。REINS Market Watchのデータを見ると、23区の中古成約件数は2025年に入って急増している(次図)。

23区中古マンションの成約単価と成約件数の推移(四半期別)
2025年は四半期平均で1,840件と、前年比33%増だ。一方で成約単価も102.1万円/㎡(2023年第1四半期)から136.3万円/㎡(2025年第4四半期)へ、約3年で34%上昇した。

より注目すべきは、新築との関係性の変化である(次図)。

新築と中古の単価比較:価格差と比率の推移(四半期別)
2023年第1四半期、中古の単価は新築の55.3%だった。「中古なら半額」という常識は、確かに存在した。しかし2024年以降、この比率は64~70%台に上昇した。中古でも「新築の6~7割」を支払わなければ買えなくなった。

2025年第4四半期、新築が226.9万円/㎡に急騰した結果、比率は60.1%に低下したが、これは中古が割安になったわけではない。単価差は90.6万円/㎡と高水準だ。70㎡換算で6,342万円の差である。絶対的な価格差は依然として大きい。

「新築が買えないから中古へ」という需要シフトが、中古価格をも押し上げた。2025年の中古成約件数増加(+33%)がその証拠だ。受け皿になったはずの中古市場も、実需層にとって容易な選択肢ではなくなっている。「半額で買える中古」という選択肢は、2025年に消滅した。

価格帯別:23区新築の過半数が『1億円超』の現実

価格帯別の発売戸数シェアを見ると、市場構造の変化が鮮明になる(次図)。

23区新築マンションの価格帯別シェアの推移(四半期別)
8000万円以下、8000~9999万円、1億円以上の3つに分類した。

2023年第1四半期、8000万円以下の物件は48.1%を占めていた。この価格帯なら、頭金を用意した共働き世帯が狙える範囲である。しかし2025年第4四半期、このシェアは24.9%に半減した。代わりに1億円以上の物件が33.8%から55.2%へ急増。23区新築の過半数が「1億円超」という市場に変貌した。

約3年で、8000万円以下の物件シェアは半減した。住宅ローンの年収倍率を7倍とすれば、8000万円は世帯年収1,100万円超に相当する。この価格帯が4分の1しかない市場で、一般的な共働き世帯が新築を買うのは極めて困難だ。

一方で1億円以上は55.2%を占める。2023年第1四半期時点では3分の1だった富裕層向け物件が、今や市場の主役である。23区新築は「普通の人が買う市場」ではなくなった。市場の主役は完全に入れ替わった。

結論:2025年は『買い』だったのか

データから読み取れるのは、価格が下がらなかったという事実である。

新築は2025年第4四半期に急騰し、中古も年間を通じて上昇した。「もう少し待てば下がる」という見通しは、少なくとも2025年までは当たらなかった。早期に購入した人は、その後の価格上昇を回避できた。一方で、予算や選択肢の面で厳しい状況に直面した人も少なくないだろう。

ただし、現在の新築マンションの価格水準が持続可能かは不透明だ。2025年第4四半期の新築急騰(226.9万円/㎡)は、過去に例のない水準である。住宅ローン金利の上昇リスクも無視できない。今後の市場動向を予測することは難しい。

それでも、2025年のデータが示すのは「待っても下がらない」現実である。供給は減り続け、富裕層需要は堅調だ。この傾向が2026年も続くかは分からないが、少なくとも2025年において、価格下落を期待した戦略は報われなかった。年末年始に物件情報を確認し、自分なりの判断材料を増やすことが、来年のスタートにつながるだろう。

2025年、23区マンション市場は多くの人に厳しい選択を迫った。2026年、この状況がどう変化するのか。引き続きデータを注視していく必要がある。

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