東京23区「成約率×在庫」完全マップ。値下げ予備軍の「危険エリア」はここだ

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東京23区の中古マンション。あなたの検討エリアは大丈夫か。
データで判明「値下げチキンレース」勃発予備軍の危険度を徹底検証。

高値市況の「潮目」を掴む

首都圏の中古マンション市場は、記録的な高値圏で推移している。しかし、すべての地区で強気が維持されているわけではなく、「売れる市場」と「在庫が詰まり始めた市場」の二極化が進んでいる。

本記事では、東日本不動産流通機構(REINS)の長期データを基に、市場の勢い(成約率)と在庫増加圧力(在庫件数)を分析する。

感情論ではなくデータが示す「値下げチキンレース」の分水嶺を明らかにし、どのエリアの売主が焦り始めているかを検証するものである。

市場の勢い計測:売り切れ続出エリアの正体

中古マンション市場の勢いを示す成約率を、過去3年間の平均値と直近6か月の平均値で比較した結果(次図)、東京の主要5地区すべてで回転率が大幅に向上していることが確認された。これは、高値市況にもかかわらず、買い手が引き続き積極的に購入を決断していることを示す。

地区別「成約率」
特に、城東地区は過去平均21% から直近29% へと、8ポイントも上昇し、全地区で最も勢いが強い。次いで城南地区が7ポイント、城北地区が6ポイントの上昇を記録した。

都心3区は過去21%から直近 23%へと2ポイントの上昇にとどまり、上昇幅は最も小さい。これは、都心部の価格水準が既に「限界点」に達し、回転率の伸びが鈍化していることを示唆する。市場の勢いという点では、都心3区よりも城東・城南地区が上回っており、都心部特有の強気が通用しにくくなっている可能性が高い。

リスクの本質:都心で始まった「在庫の逆襲」

値下げチキンレースの土壌となる売主のプレッシャーを測るため、在庫件数の前年同月比(1.0が横ばいを示す)の推移を長期的に検証した結果(次図)、都心3区に明確な「在庫の異変」が発生していることが判明した。

他の城東、城南、城北の各地区が1.0を下回る水準で推移し、健全に在庫を消化し続けている中で、都心3区のみが2024年11月以降、急激に1.0を超え、現在1.23(23%増)という異常な高水準にある。これは、他の地区とは異なり、都心3区の高額物件が買い手に敬遠され、市場で積み上がり始めたことを裏付ける。

一方、城東・城南地区は長期的に1.0を大きく下回る水準を保っており、売主のプレッシャーは極めて低い状態が継続している。在庫増加という決定的なリスクを抱えるのは、東京の他のエリアを牽引してきた都心3区のみであるという、市場の二極化がデータによって浮き彫りになった。この在庫増加が続けば、都心3区は市場の潮目が変わる最初のエッセンスを握ることになる。

地区別「在庫件数の前年同月比」推移

結論:エリア別「安全度」完全マッピング

市場リスクを可視化するため、「在庫増加圧力(縦軸)」と「市場の勢い(横軸)」を用いて5地区をマトリクス上にプロットした。境界線は、客観的なリスク閾値である在庫増減の1.0と、成約率の勢いを示す0%を採用する(次図)。

「市場の勢い(横軸)」×「在庫圧力(縦軸)」
分析の結果、都心3区のみが右上象限に位置し、他の4地区とは明確に異なるリスクフェーズにある。都心3区は在庫件数が前年比1.26(26%増)と突出しており、市場の供給圧力が非常に高い。これは、高値維持の限界が近いことを示す強力なシグナルである。

一方、城東・城南地区は、在庫が0.92、0.85と減少傾向にあり、成約率の乖離も10%、7%と極めて高い「右下:優良/安全地帯」に位置する。これらの地区では依然として売主優位が続いており、値下げ競争が始まる可能性は低い。

値下げチキンレースの勃発は、都心3区の在庫増加が止まらず、成約率が 0% を割った瞬間、すなわち「左上:勃発ゾーン」に移行した時に現実となる。

提言:データが導く「買い時」と「待ち時」

これまでの成約率と在庫増加圧力の分析を踏まえると、現在の市場は地区によって取るべき戦略が明確に分断されている。

「買う理由」が強いエリアは城東・城南地区

成約率の伸びが全地区で最も大きく、在庫が減少傾向にある(城東 0.92、城南 0.85)ため、需要が安定的に供給を上回っている状態が継続している。

このエリアの物件価格は強気であるものの、待っても大幅な調整は期待できず、購入を検討するなら早期の決断が交渉上有利となる。

「静観・指値交渉」が有利なエリアは都心3区

都心3区は市場の勢いはプラスだが、在庫が前年比26%増の1.26と突出しており、供給過多に陥りつつある。

このまま在庫が積み上がれば、売主のプレッシャーが高まり、値下げチキンレースの舞台となる可能性が高い。よって、購入希望者は急がず静観し、今後の在庫消化の状況を見極めるか、在庫増加を理由とした強気の指値交渉を行うべき時期である。

城西・城北地区は中間的な安定市場であり、大きなリスクもリターンも見込めない。

マン点
本記事の記載内容にかかわらず、物件を決めるのは自己責任でお願いします。

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